第12章 紋様と花
「嬉しいね、実弥さん。まだ胡蝶さんの継子には会ったことないけど、こうして同じ継子が増えるのが私は嬉しい。たぶん実弥さんが一番……継子の扱いに困ってると思うけど」
「そうだろうよ……まァ、胡蝶んとこの継子……確か栗花落だっけか?そいつは勝手に胡蝶の許可なく最終選別受けたらしいんでなァ、お前と気合うんじゃねェか?」
なんと同じような跳ねっ返りな行動をする継子がいたようだ。
しかしここでそれに喜んでしまえば実弥に叱られるのは目に見えているので、喜び跳ねかけた体を必死に抑えニコリと笑みを向けるだけに留めた。
「カナヲは俺の同期なんだ。風音の怪我が良くなったら紹介するよ!風音、師範は違うけど同じ継子として一緒に頑張ろうな!」
「……頑張るも何もコイツの階級甲だっつぅの。精々コイツに追い付けるよう煉獄に扱きまくられろ、クソが」
風音はお口の悪い実弥の頬に手を当てニコリ。
これは流石に怒り出すかと三人は思ったが、風音には実弥に苛立つなどという感情はないようだった。
「実弥さんが放り出さずに側にいてくれたから甲になれたんだよ。今のは実弥さんからの最大級の激励です!私もまだまだなので一緒に頑張りましょうね、竈門さん」
どこをどう取れば激励になるのかはさて置き、ニコニコとそうだと信じて疑わない風音の頭を杏寿郎が撫でて立ち上がった。
「君は不死川のことをよく分かっているな。これからも俺や継子たちはもちろん、不死川とも仲良くしてくれ。さて、竈門少年。あまり長居すると風音の傷に良くないかもしれない。そろそろ互いの部屋に戻ろうか」
「はい!風音、不死川さん。長々とお邪魔しました。また一緒に話をしてください」
「もちろ……」
「うっせェ、早く帰れ。クソ、邪魔しやがって」
……口付けしようとしたのを中断させられた時のことを言っているのだろうが、何を邪魔したのか分からない炭治郎はしょんぼりだ。
「ふむ、きっと風音に接吻しようとしたのを竈門少年が中断させてしまったのだろう!気にする必要はないぞ!今から存分に出来るからな!」
そんな事まで感じ取ってしまう杏寿郎に冷や汗を流しながら、怪我人とは思えない機敏な動きで部屋を出ていく二人の背中を見送った。