第12章 紋様と花
杏寿郎の言葉に永遠と頭を下げ合っていた二人は顔を見合せ、今度はこれからもよろしくとペコと一度頭を下げて、ようやく実弥に僅かながら心の安寧が訪れた。
「はァ…… 風音、俺は外に出る。ちょっと外の空気吸ってくっから煉獄たちと待ってろ」
「え……うん。分かった、行ってらっしゃい」
少し悲しげにシュンとなったのは一瞬。
行ってらっしゃいと言う頃にはニコニコとしている……実弥の手を握り締めたまま。
「……おい、言葉と動きが伴ってねぇんだけど」
「あ!ごめんなさい、つい……ここで杏寿郎さんと竈門さんと待ってるね。行ってらっしゃい」
慌てて手を離した風音に苦笑いを零し、ポンポンと頭を撫でて椅子から立ち上がり部屋を後にした。
その後ろ姿を見送った風音は撫でてもらった頭に触れてふわりと微笑み、杏寿郎と炭治郎もつられて笑顔となる。
「風音は本当に不死川を好いているな!不死川は言葉尻は荒く感じるが、とても優しいだろう?」
「はい!私が落ち込むと自分の事のように心を痛めてくれるので、私の方が申し訳ない気持ちになるくらいです。村の外に出て初めて出来た私の宝物。笑顔なんて目尻が下がって私まで優しい気持ちになれるんですよ」
惜しげもなく実弥への愛を語る風音に呆れることなく、二人はほのぼのと何度も頷き杏寿郎のみならず炭治郎まで風音の頭を撫でる始末だ。
「不死川さんからも風音のことが大好きで大切で仕方ないって匂いがするよ。二人のいる部屋にいると俺がはずかしくなるくらい」
「だろうな!不死川も風音を一等好いているからな!しかしこの会話を不死川が聞いていれば、間違いなく風音は頬を……」
ガラッ
気が付けば風音の頬は今し方物凄い勢いで入ってきた人物によって掴まれていた。
ムギュっと……
「テメェ、少なくとも俺が部屋から遠ざかったの確認してから口開いたらどうだァ?!いつも余計なことをコイツらにベラベラと……口縫っちまうぞ!」
しかも風音が実弥の言葉に何か返答してしまわないように口までご丁寧に押さえられているので、風音は顔を真っ赤にして怒り狂う実弥を見上げることしか出来ない。