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涼風の残響【鬼滅の刃】

第12章 紋様と花


「すっげェ口説き文句だなァ。 待ってろ、お前と同じような痣を出す方法が分かれば真っ先に試してやる。風音一人に背負わせねェ」

「やっぱり実弥さんは優しいね。じゃあ私は実弥さんが痣を出す前に寿命が縮まらないようにするお薬完成させなくちゃ。実弥さんはたくさん生きて幸せになるべきだから」

実弥の優しい言葉は風音の心を穏やかにさせ、風音の優しい言葉と願いは実弥の胸を締め付けた。

だが風音は実弥と約束をした。

鬼に殺されて死なない、と。

鬼を倒すための絶大な力を得る代償によって死ぬことも、結果的には鬼に殺されるようなものだ。

普段はあっけらかんとしてのほほんとしているが、様々な薬草などを調合して薬を作ることを得意としている風音は基本的に頭がいい。

その風音が死なないと言ったのだ。
先ほどの言葉も自分が死んだとしても……などと心の中で思いながら発した言葉ではないはずである。

それでも実弥にとっては風音の自己犠牲の上に成り立つ人々の幸せを願う言葉に聞こえ、物悲しい気持ちになってしまう。

「お前のが優しいだろ。隠にも他の剣士にも好かれてんじゃねぇが。奇跡の女剣士って呼ばれてんぞ」

「え……奇跡の女剣士って何?」

頬から温かさが離れそちらに視線を向けると、風音がキョトンとした顔で実弥を見つめていた。
それに小さく笑い額同士をコツンと合わせる。

「お前と一緒に任務すると死なないどころか傷さえ最低限に済むんだとよ。柱ほど力量はねェが、柱と同行任務に行くのと同じくらい被害が少なくなるって噂されてた」

予知能力を使っているからだろう。
剣士たちが死なないようにこっそり予知能力を使って誘導することによって、それが風音の望み通りの結果に繋がっている。
呼ばれ方はさて置き鬼殺隊の力となれていることが嬉しく、風音は自ら実弥の唇に触れるだけの口付けを落とした。

「それこもこれも実弥さんがお力添えしてくれているからだよ。フフッ、実弥さんも剣士たちの間で噂になってるの知ってる?」

ポスンと実弥の胸元に赤くなった顔を預けた風音の頭を撫でながら首を傾げる。
風音の噂ならちょこちょこ耳に入っていたが、自分の噂など聞いたこともないからだ。
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