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涼風の残響【鬼滅の刃】

第12章 紋様と花


「恐くねぇのかよ。何でそんな穏やかに笑ってられんだ?あと数年しか生きれないかも知んねぇんだぞ!」

まるで消えてしまわないでくれと言うように実弥の腕の力が強まり、自分のことのみだとあっけらかんとしている風音も、ようやく胸に痛みを覚え出した。

「怖くないわけじゃないよ。でもこの力が少しでも鬼を滅ぼす足掛かりになるなら悪くないなとは思う。それに本当に体に異常がないから実感が湧かないっていうのもあるかな。……ねぇ、この痣は実弥さんたちにも出る可能性があるの?」

「出る可能性はあるらしい。だが出す方法が分かんねェから出したくても手詰まりな状況だ……俺はお前だけにこんなことを背負わせたくねェ。なに柱より先を突っ走ってんだよ……お前ならもっと穏やかに暮らせる道、いくらでもあったじゃねぇかァ」

いつになく悲しげな声音や体に伝わってくるほどに強く速くなった心臓の音は、今の実弥の胸中を痛いほどに風音に知らしめてくる。

自分のことだけならば仕方がないと割り切れたのに、こうも自分のことで悲しむ実弥を見ると目の奥にツンと痛みが走った。
しかし泣くわけにはいかない。

いつも自分が涙を流すと決まって優しく寄り添ってくれている実弥に、今度は自分が寄り添う番なのだから。

「いくらでもあった中から私は実弥さんと同じ世界を見る道を選んだんだよ。後悔なんて今まで一度だってしたことがない。どんな穏やかな人生より実弥さんの側で戦いたい。それに私は変な体質だから、しぶとく長生きするかもしれないよ?」

先ほどより悲しみの色の薄まった実弥にふわりと微笑み、風音は自分より高い位置にある実弥の頬に頬を寄り添わせて言葉を続ける。

「実弥さん、大好きです。私を見つけてくれて、側にいてくれて……好きになってくれてありがとう。私以上に幸せな人なんていないんじゃないかって思えるくらい今幸せなんだよ。この道を選んでよかった」

いつもの緩々な雰囲気とは全く違う何とも心穏やかにしてくれる雰囲気や声音、頬に伝わる温かさに身を委ねるように、風音の体を抱き寄せ直し触り心地のいい髪をするりと梳いた。
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