第12章 紋様と花
首の傷が完全に塞がっていない風音を考慮し、いつの日か思い留まった鼻を摘む……にとどめてやる。
しかし力はそれなりに入れているので考慮されていると言えど痛いことには変わらない。
「いひゃい……し、知られてないはず。そもそも人を通して鬼の先はある程度把握出来てたから……鬼の先が見えたとしても、私からすれば選択肢が増えただけで……あんまり有難くない」
「お前が有難くなくても鬼からすりゃあ有難てぇんだよ!これから任務どうすんだァ?!危機感ねェなら家ん中に鎖で縛り付けんぞ!」
一度ギュッと鼻をつままれてから開放された。
未だに続く痛みに涙目になりながら風音はシュンと手元に視線を落とす。
「実弥さんのいる実弥さんのお家は好きだけど……任務には出たい」
実弥がいる家は好きらしい。
だがその家で安全に過ごすことは望まず、やはり変わらず実弥と共に鬼殺隊の剣士であることを望んでいる。
「はァ……ならもっと危機感持て。ただでさえお前は鬼殺隊にいるだけで俺らより危ねぇんだ。今回ので甲になっちまって任務自体も危険度が桁違いに上がんだぞ」
何度言い聞かせ嗜めても合同任務となると傷だらけになって帰ってくる。
傷だらけになっても鬼を倒して帰ってくるので、必然的に風音の階級は順調に上がりついには柱に次ぐ甲にまでなってしまった。
師範として継子が短期間で甲になる事は誇らしく嬉しい限りだが、実弥にとっては心配事が増える一方で複雑な心境なのだ。
「はい……でも大丈夫!実弥さんの笑顔を毎日見られるようになるまで死なないって決めてるから!それを願い続けられる限り私は死なないから」
「……俺より先に逝くな、もう見送んのは御免だ。分かったなァ?」
寿命に関しては約束出来ないことは実弥とて100も承知だろう。
そうではなく実弥は鬼に殺されるなと言っているのだ。