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涼風の残響【鬼滅の刃】

第11章 薄暮と黎明


「何を……」

猗窩座の誰かをいたわるような声、傷を心配するように伸ばされた手に風音は思わず動きを止めた。
しかしその手が風音の首元に届く寸前で、以前に実弥から激しい叱責を受けたことを思い出してその場から離れた。

「炎柱様、お待たせ致しました。これから……今までより激しい攻防が繰り広げられます。恥ずかしながら傷を負いましたので、私は後援を務めさせていただきたく思います」

「分かった。君は失血で倒れないことを優先してくれ。俺は柱としてこの場の全員を守る責務がある。一般の方々や後輩たち……君を誰一人死なせはしない。あと……あの鬼が君に隙を見せたとしても動きをとめないように、気を許してはいけない」

そう言い残して杏寿郎は猗窩座へと技を放ちながら挑んでいき、風音は先ほどの行動を恥じながら杏寿郎の後に続いた。

「お父さんを思い出してる場合じゃない。はぁ……私も誰も死なせなくないのは一緒です!夙の呼吸 伍ノ型 天つ風」

人とはこれほどまでに高く飛び上がれるのかと思うほどに高く飛び上がった風音は、自分に攻撃が叩き込まれないことを想定した上で猗窩座の視界に入り、杏寿郎の右脇腹に叩き込もうと構えていた腕を落ちる速度そのままの勢いで叩き斬った。

風音自身もこれまでにない高さまで跳躍できたことに驚いていたが、それよりも上弦の鬼の腕を吹き飛ばしたことに全意識が持っていかれる。

「き……斬れた?!」

今までは身を斬るまでしか叶わなかった。
それがどういうわけか今の攻撃は腕を吹き飛ばすまでの威力を発揮し、杏寿郎はもちろん猗窩座も驚きを隠せず動きを止めた。

(よく分からないけど……次は杏寿郎さんの額と目を)

「夙の呼吸 壱ノ型 業の風」

猗窩座が後ろへと跳躍するように横に日輪刀を振り切り反動で捲れ上がった袖の中……自分の腕を見て目を見開く。

「何……これ。痣?刺青……みたいな」

そこには風に吹かれ宙を舞う葉のような若葉色の紋様が浮かび上がっていたのだ。
それに気付いているのは風音だけだが、突然高威力の技を出した風音に喜んだのは目の前の鬼だった。
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