第2章 柱
自分を助けてくれた実弥の温かさから離れることは寂しさを感じるが、このままではいられないので顔を上げて再び実弥の手を取り食事処へと引っ張る。
「ありがとうございます!これから気を付けますね!蜜璃ちゃんも待ってくれていますし中に入りましょ!私もお腹空いちゃった」
その言葉に呼応するように風音のお腹の虫が盛大に鳴いたので、自然と実弥の表情が綻び苦笑いが浮かんだ。
「分かったから引っ張んなって。てか甘露寺と偉く距離縮まったんだなァ」
「はい!お友達になろうって言ってくれたんです!」
なんてことの無い二人の遣り取りは柱たちからすれば、今まであまり見たことがない穏やかなものだった。
それに突っ込んでしまっては再び実弥が不機嫌になりそうだったので、何も言わずそっと背中に生暖かい視線を送るだけにとどめることにしたようだ。
蜜璃に続き二人が食事処へ足を踏み入れるのを確認すると、柱たちも後に続いて中へ足を進めた。
品書きを見ながら風音は蜜璃にお勧めを教えてもらい、皆がそれぞれ好きなものを注文して食べ終えた後……小さな騒ぎが起こった。
「ねぇ、風音ちゃん。聞きたいことがあるの!いいかしら?」
見た目からは想像できないほどのご飯を平らげた蜜璃は、食後の甘味だと言ってこれまた大量の甘味を前に風音に向かって首を傾げ疑問に思ってたことを問いかけた。
可愛らしい女の子の願いを退けるなんて出来るはずもない風音は、今朝実弥に分けてもらい気に入ったおはぎを喉に流し込んで頷く。
「もちろんです。何でしょうか?」
「ありがとう!あのね、さっき不死川さんが風音ちゃんに、柱の皆のことを知ってると思うけど……って言ってたじゃない?会ったことなかったのに、どうして私たちのこと知ってたのかなって。不死川さんに似顔絵でも見せてもらったの?」
……今回のやらかしは風音でなく実弥である。
そんな実弥を伺うように風音が困ったように視線を送ると、膳の上で頭を抱えていた。
しかしいくら頭を抱えたとて現状は変わらない。
「えーっと……似顔絵と言いますか……」
(どうしよう……言って気味悪がられたら……せっかく皆さんと楽しい時間を過ごせたのに)