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涼風の残響【鬼滅の刃】

第11章 薄暮と黎明


無事に笑顔の戻った風音に安堵した杏寿郎は今度こそ今いる車両を後にして、そろそろ回復してくるであろう肉塊の対処に赴いていった。

今の風音に出来ることは任された車両の乗客を全力で守ることだけだ。
一つ懸念されることは……下弦の壱が風音に報復するために肉塊を集結させないかということだが、起こるか分からない事柄に気を揉んでいては目の前の事柄の対処に手間取ると思い直し気を引き締め日輪刀を構える。

「もうそろそろ回復する。先が分からない分、私も本腰を入れないと負傷しちゃう。上弦の鬼との戦闘に備えて四肢を欠損するわけにも折られるわけにもいかない。ふぅ……夙の呼吸 肆ノ型 飄風・高嶺颪(たかねおろし)」

風の呼吸で高く跳躍してから放つ技が幾つかある。
一応風の呼吸を全て扱えるものの、派生の夙が一番体に合っている風音では実弥のように強い威力を出すことが叶わなかった。

それが何となく悔しく、実弥と相談して風音にも威力が出せる跳躍系の技を編み出したのだ。

体をねじりながら跳躍してその捻りを利用し日輪刀を横へと振り払って三筋の風の刃を敵へと叩き込む。

毒を流し込んだ時ほどではなくても客車が小さく跳ねたので、それなりに痛手を負わせることが出来たのだろう。

「実弥さんに感謝しないと。実弥さんがいてくれたから私は鬼と戦えてる……次は向こうの車両へ……何?!」

汽車内に毒を注ぎ込んだ時以上の叫び声が響き渡った。
杏寿郎が鬼へ致命傷を与えたのかとも思ったが、先の車両にいる杏寿郎も動きを止めて警戒を強めているので当事者ではない。

となると車両内にいない炭治郎と伊之助が鬼の頸を切り落としたのだと結論付けると今の叫び声や衝撃も納得がいく。

「何が起こる?……最後の足掻きで……ーーっ?!」

肉塊が乗客を取り込もうと動き出すと思った。
しかし最後の足掻きで出現させたであろう肉塊は全て風音へ狙いを定め、一斉に襲いかかってきたのだ。

「何これっ……?!夙の……んっ?!」

呼吸をさせないと言うように肉塊が風音の口を抑え、何を考えているのか日輪刀を握っていない方の手首から先に肉塊を絡ませてきた。
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