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涼風の残響【鬼滅の刃】

第11章 薄暮と黎明


そして流れ出てくる血を切り刻んだ肉塊に垂らそうと腕を伸ばすと、その手は新たに出現した肉塊によって絡められ止められた。

すかさずその肉塊を日輪刀で切り刻み腕を解放する。

「猛毒は怖い?そうだよね、私の予知能力を知ってるくらいなら私の血肉が鬼にどれだけ効果があるかも知ってるはずだもんね。それなら私が今までどうやって戦ってきたかも知ってるんじゃないの?」

今更腕の傷が増えようと気になどならない。
実弥が綺麗だと言ってくれる肌に傷を付けるのは心苦しいが、奥の手であるしのぶ特製の風音の血液を元にした毒薬は使えない。

「初お披露目なんだけどね、隊服を改良したんだ。師範に怒られ呆れられながら」

そう言って羽織を捲り上げるとそこに隊服の袖はなく、風音の腕が何も保護するものを纏っていない……素肌の状態であるだけだった。

『うわぁ、人間って馬鹿だよねぇ。己の身を削って俺たちに向かってくるなんて。でもさぁ、眠ればその血も使えないよね?』

「そうだね、どっちが速いだろうね?」

躊躇いなどない。
自分の生まれ持った特性を活かしてこの場の仲間たちの力になれるのならば、風音には何も迷うことは無いのだ。

杏寿郎たちがどのように眠らされたかは不明のままだが、眠らせることがこの鬼の持つ血鬼術ならば眠らされる前に攻撃を仕掛けるまで。

勢いよく腕を滑った刃は風音の血の色に染まり、その刃に付着した血さえも無駄にするまいと近くに盛り上がってきていた肉塊を切り付け、皮膚の上を流れる血をそこへと注ぎ込む。

すると汽車内にこの世のものとは思えないほどの耳障りな悲鳴が響き、客車が大きく跳ね上がった。

「私の方が速かったみたい。どう?苦しいでしょ?もっと注がれて……」

「風音!君はまた無茶をして……俺が中の三両を受け持つから君は傷を手当てするんだ!縫合しなくても止血方法くらい心得ているだろう?」

更に刃を滑らせようとした手は戻ってきた杏寿郎によって強く掴まれ動きを止めた。
その手の力や杏寿郎の言葉に抗うことはせず、いつの日か実弥から教えてもらった呼吸を使った止血を行う。
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