第11章 薄暮と黎明
先ほど切り刻んだ後ろ三両から更に一両を刻み杏寿郎の姿が目に入った。
禰豆子が杏寿郎たちの縄を焼き切った際、襲いかかってきた少年少女の姿も客席に見える。
その人たちはどうやら鬼に自ら力を貸していたようだったが、それぞれが鬼に頼らなければならないほどに追い詰められていたらしい。
だからと言って沢山の人を犠牲にした人たちのいいようにされるわけにはいかないので、一人を除いて気絶させる道を選んだ。
その気絶していない一人の少年は突然出現した肉塊に恐れ身を縮こませていた。
「夙の呼吸 壱ノ型 業の風」
危うく肉塊に取り込まれそうだった少年を救い出すと、風音はその少年の腕を引っ張り背後に庇う。
「私ね、私の師範と約束したの。この汽車内の人たちを全員守るって。私にとって師範とのお約束は絶対だから……このお薬を持って行って下さい。飲み続ければ貴方の病気は完治します」
鞄から取り出した巾着を後ろ手に少年へと渡し、残りの肉塊を切り刻んでから少年の前へと戻り手を握る。
「貴方は絶対に守ります。だからもう鬼の甘言に惑わされないで……禰豆子さん以外の鬼は人を利用することはあっても助けてくれることはありませんから……あ、あとこの液体を飲んでて下さい!これを飲めば鬼に襲われないはず……」
「風音!本当に来てくれたのだな!ん……その液体は……」
少年が何か返事を……と考えている間に杏寿郎が目を覚まし、風音が手に持っている液体の入った小瓶を笑顔で見つめ何度も頷いた。
「少年!この液体はこの子が懸命に絞り出したものだ!間違いなく君を守ってくれるので飲んでおくといい!さて風音。不死川からは汽車内では俺の指示に君を従わせろと言われている!俺は先に竈門少年たちへ指示を出しに行くので、それまで後ろ五両を君に任せる!俺が戻ればまた指示を出す!いいな?」
「もちろんです!短時間であれば五両はどうにかなると思います。行ってらっしゃいませ、炎柱様。帰りをお待ちしております」