第11章 薄暮と黎明
「もちろんですよ。今日の夜には麻酔が切れて目を覚ますはずです。でも……縛り付けてでもベッドに拘束しておかなければ、煉獄さんの任務についていこうとしていますよ?毎日麻酔を永遠に打ち続けるわけにもいきませんし……」
それは流石に風音の体に悪影響が及びそうだ。
だからといって何も策を講じず、重症の風音が上弦の鬼が出る任務になど同行させるなど出来るわけもない。
風音が先を見られる最長は一ヶ月。
骨折だけならまだしも今の状況で一ヶ月以内に完治することは不可能である。
「はァ……俺が言い聞かせても簡単に頷くとも思えねェ。鎖で家の中に繋いでてやろうか、アイツ……」
「鎖で繋ぐのは可哀想だろう!ふむ……鎖に変わる妙案が浮かばないのが心苦しいな」
「それくらいしねェとアイツを止めんの無理だろォ……」
三人で頭を悩ませるも風音を止める方法が思いつかない。
あるとすれば柱の誰かが杏寿郎に同行することだが……
「どうやら柱全員がその日は任務が割り当てられるらしく、自分しか同行出来る剣士がいないと言っていました。いつの間にそこまで見たのか分かりませんが……悲壮な表情で私に訴えてきていたので嘘ではないのでしょうね」
正に八方塞がりである。
予知能力がない普通の少女であったのならば、力量不足を理由に待機命令を出すことが可能だった。
しかし残念と言うべきか……予知能力のある風音が杏寿郎に同行することで鬼を滅する上で大いに役立ってしまうのだ。
「アイツは俺の継子だ、アイツに関しては俺でどうにかする。今は胡蝶が聞いた話を聞かせろ。何日後に汽車の任務があるか、上弦の何番目がくるか、あと煉獄がどうなっちまうのか」
まだ目を覚ましていない風音で頭を悩ませるより、風音を止めることが出来るかもしれない策を講じる方が得策だと思い直し、しのぶが風音から仕入れた情報を頭に叩き込んでいく。