第2章 柱
蜜璃に話を遮られ苛立ちを募らせたものの、突然大人数に囲まれてしまい不安げに体を縮こませた風音を見た実弥は小さく息を零して気持ちを落ち着けた。
「知ってっと思うがコイツらは鬼殺隊の柱だ。お前に対して害を成すことをしねぇし言わねェよ。嫌じゃないなら飯、コイツらと食いに行ってみるかァ?」
実弥の優しい声音や言葉に驚いたのは風音ではなく柱たちだった。
それでも驚きの声を上げず必死に押し留まっている理由は、目の前にいる少女が怯えて言葉を飲み込むことをしないためである。
「不死川さんのお仲間……うん、お邪魔でないならご飯一緒に行かせてもらいたいです。いいですか?」
「いいも何も俺は構わねぇって言ってんだろうがァ。それにコイツらの顔見てみろよ……」
実弥を見上げていた顔を柱たちに向けると、未だに手を握ってくれている蜜璃はもちろん、他の6人も笑顔で頷いてくれていた。
「あの……鬼殺隊でもない一般人ですが、お昼ご飯ご一緒させて下さい」
ぺこりと頭を下げてから再び柱たちに視線を戻そうと顔を上げると、爛々と目を輝かせた驚くほど顔の造りが整った銀色の髪に長身の音柱、宇髄天元の顔が目の前にあった。
「お前、派手な目の色してんなぁ!いいじゃねぇか、俺らに混じっても遜色ねぇ!」
突然天元の顔が目の前にあっただけでも風音にとって驚きであったのに、自分にとっていい思い出の少ない目の色に触れられ体を硬直させた……が褒められている事実に首を傾げた。
「鬼子みたいって思わないのですか?この瞳の色……」
「思うわけがないだろう?綺麗な色ではないか!それに君の瞳の色で鬼子ならば、ここにいる俺たち皆が鬼子になる!俺は赫と黄色だぞ!」
炎を彷彿させる金と赫の髪、瞳を持つ炎柱である煉獄杏寿郎の言葉に風音は改めて柱全員をくるりと見回し嬉しそうに顔を綻ばせた。
そんな風音へ僅かに笑みを零して頭をポンと撫でると、実弥は風音の背に手を当てて歩くように促す。
「だとよ。あんなちっこい村で言われてたことなんて気にしてんじゃねェ。ほら、飯食いに行くぞ」