第10章 犠牲と招集
背に庇ってくれている天元の言葉通り、目の前では実弥と炭治郎の激しい言葉の応酬が繰り広げられており、炭治郎が実弥に何かしようと走り出した姿が映し出された。
そこに義勇から二人へと諌める声が入りそれに反応した実弥の気が炭治郎から逸れてしまった。
このままでは実弥が怪我をしてしまうと直感した瞬間、風音は優しい力で押さえてくれていた杏寿郎の手から逃れて実弥の前に立ち塞がり、炭治郎と向かい合って両腕を広げた。
既に飛び上がり頭を振りかぶっていた炭治郎に次の行動を止めることが出来ず、風音の頭と炭治郎の頭が鈍い音をたててぶつかった。
激しい衝撃に揺れる頭と体をどうにか動かし、地面に落下した炭治郎に向き直る。
「お前何やってんだァ?!」
いきなり目の前に現れた風音に呆然としていた実弥も、ふらふらと体を揺らせる細い体に我に返り後ろから両肩を掴んで支えた。
「差し出がましいことをして……すみません。竈門さん……どうかこれで許して下さい。もう……剣士の誰かが傷付く姿なんて見たくない……です」
「風音……どうしてここに……」