第10章 犠牲と招集
「竈門だァ?!鬼殺隊剣士のくせに鬼連れ歩いてる馬鹿の事じゃねぇかァ!知るかよ!」
全て教えてくれた。
「……鬼を?竈門さん、襲われないの?」
「だから知らねぇっつってんだろ!……悪ぃ」
大声に驚き体をビクつかせた風音を見た実弥は深呼吸をして最低限気持ちを落ち着け、バツが悪そうに頭を掻いた。
もちろん風音はただ驚いただけで、やはり恐怖は抱いていないようで笑みを浮かべて首を左右に振った。
「ううん、知らないって言ってるのに私が聞いちゃったから。そっかぁ……それで拘束されたんだ。那田蜘蛛山で少し話したんだけどね、すごく優しい男の子だったからビックリして……」
「……面識あんのかよ……確か胡蝶からの知らせでは、鬼の方は竈門の妹って言ってたなァ」
その言葉に風音の胸がキュッと締め付けられた。
家族を鬼にされ、それを自らの手で滅した自分と実弥。
かたや鬼となった妹を滅することなく連れ歩き、鬼殺隊として鬼を滅している竈門炭治郎は何が違ったのだろう。
何をどうすればそのような事が可能なのか……いくら考えても分からなかった。
「そう……あ、ごめんね!長い時間引き止めちゃって。一緒に寝れないから、せめてお見送りだけでもさせて?少しでも一緒にいられるように」
何となく作り笑顔のように映るが、実弥とて風音の今の心境と同じなのでそうしたくなる気持ちは痛いほど分かったので、未だに心の傷の癒えきらぬ少女の体を引き寄せて強く抱き締めた。
「頼むわ。馬鹿隊士の件が片付いたら……家に帰んぞ。シナとヒイとラギも待ってんだからなァ」
「フフッ!うん!帰ったら一緒にご飯あげようね!きっとお腹空かせて待ってるから」
どうにか和やかな雰囲気を取り戻した二人は少しの間互いの体温を確かめあった後、それぞれがしなくてはいけないことに精を出しに向かった。