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涼風の残響【鬼滅の刃】

第9章 糸と朧


「お前をカミさんにって決めた時から覚悟はしてんだ、今は俺に謝るより自分の体調整えろ。他にして欲しいことねェのかよ?」

「……これ以上ないくらいに願い叶えてもらってるよ。でも……肌に触れたい……かな。はだけさせていい?」

とんでもない言葉が飛んできた。
まさか嫁に迎える前の少女から

はだけさせていい?

など誰が問われると予測できるだろうか。

「それは絵面的にどうかと俺は思うがなァ。はァ……しゃあねぇなァ、ちょっと待ってろ」

かと言って特に害のない願いを切り捨てられる訳もなく、実弥は風音の体を少し離して浴衣の襟元に手を掛け、するりと肩から浴衣を床へと落とした。

「これで……テメェ、せっかく人が恥をしのんで上半身さらけ出してやってんのに、何顔隠してやがんだァ?お前が触れてぇっつーからこうなったんだろうが」

「そうなんだけど……実弥さんの体見るのって未だ少し恥ずかしくて……あ!待って、着直さないで!フフッ、少しお邪魔します」

危うく浴衣を着付け直されるところだったのをどうにか阻止し、風音は優しい暖かさに身を委ねにいった。

「あったかい……大好きな人の肌ってどうしてこんなに安心できるんだろ。ね、実弥さん」

「俺は未だにお前の肌にこうやって直接触れてねぇけどなァ。けど……きっと心地いいんだろうなァ。おい、コラ。何脱ごうとしてやがる。貞操観念取り戻しやがれ馬鹿」

思いの外厳しい言葉が飛んできた。
しかし風音はふざけていたわけではなく、いつも自分の願いばかり叶えてくれる実弥に少しでも何か出来れば……と浴衣の襟元に手を掛けただけである。

「大丈夫!サラシ巻いてるから。私が感じてる心地良さを実弥さんにも感じてもらいたいなって。駄目?」

駄目か駄目じゃないかと言われると駄目じゃないに決まってる。
しかしここは自分の家ではなく他人の家だ。
今の状態を他の者に目撃されればそれだけでまずそうなのに、サラシを巻いていると言えど上半身をはだけさせている少女を胸の中におさめている状況など、柱である自分が他の者に見せるなど出来はずもない。

「馬鹿なこと言ってねェで寝ちまえ。今でなくてもそのうち嫌ってほど見せてもらう、先に……お前の精神面落ち着けろ」
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