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涼風の残響【鬼滅の刃】

第9章 糸と朧


(策なんてない!実弥さん……策あるの?って顔してるんだろうなぁ……どうしよ、下弦の弐相手に……ましてや私より年季の入った風の呼吸を遣う鬼に技で上回るのはほぼ不可能。やっぱり血を使うしかない……か)

風音が自分の血を使わずに下弦の弐を倒すことは難しいと師範である実弥は分かっていたし、何より本人が一番理解している。
前に戦った下弦の壱はたまたま血鬼術と風音の能力の相性が良く、最後は実弥に助けてもらったものの予知を使えばそれなりに対処は出来ていた。

しかし元鬼殺隊で風の呼吸を長年使用し、鬼となった今も尚技として機能させている父親に勝つなどよほどの運が味方につかない限り不可能に近い。

「師範!すみません、血を使うので帰りはゆっくりの移動をお願いします!」

帰りも歩けるつもりでいるらしい。

「歩いて帰れると思ってんのかよ……はァ、加減して使え。帰りは運んでやっから今は鬼に集中しろ!」

まるで風音に気合いを入れるように声を張り上げてくれた実弥に戦闘中であっても笑みが零れ、その笑顔のまま大きく頷き体勢を整えた鬼へと迫り寄って腕に日輪刀の刃をあてがった。

「お父さん……出来ればこれは使いたくなかった」

「や……めろ」

ここに来て初めて鬼の声を聞いた。
その声はやはり風音の知る父親のもので胸が締め付けられ気を削がれた瞬間、まるで刃を滑らせることをさせないかのように手首が握られ……次に見えたのは風音の手首を掴んでいた手が宙を舞う光景だった。

「死にてぇのかァ?!アイツの声聞いて動揺するくらいならやめちまえ!頸は俺が落としてやるよ!邪魔だ、すっこんでろォ!」

容赦ない実弥の叱責が風音に降りかかった。

だがついさっき実弥に鬼に集中しろと言われ、大きく頷き返したのだ。
今までのどんな叱責よりも激しい叱責を受けたからと言って、涙を流したり憤ったりなどする資格は風音にはない。

今にも鬼へと踏み切ろうとした実弥の腕を持てる力全てを使って掴み、勢いに任せて後ろへと引き戻した。

「申し訳ございません!もう同じ過ちは繰り返さないと約束します!だからお願い、最後までやらせて!」
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