第9章 糸と朧
「うん、もちろんだよ。私も実弥さんの肌に触れたい。それでね……印つけて欲しいなって。あ、えっと!やましい気持ちからじゃなくって……その……愛しいってたくさん言ってもらってる気持ちになるから……」
首まで赤く染める風音に愛しいと伝えるようにギュッと抱き締め、熱くなった頬に軽く頬を擦り寄せた。
「あん時以来付けてなかったなァ。……お前につけても隊服で隠れちまうから虫除けになんねぇってつけてなかったが…… 風音が喜ぶなら悪かねェ。気ィしっかり保っとけよ?」
「虫……?え、ちょっと待って!ここはちょっと大変!今までの流れを考えると、天元さんと天元さんに誘われた杏寿郎さんがここに来るんじゃ……ダメダメ!見られたら気絶するから!」
このままだとまた恥ずかしいところを二人に見られてしまう。
そう感じた風音は実弥の腕の中からの脱出を試みるが、実弥の力に敵うはずもない。
息切れしようと涙目になろうと、実弥の腕の力が弱まることはなかった。
「どうせ邪魔されんなら見せ付けてやればいいんじゃねェかァ?そのうち向こうから遠ざかって……いかねぇか。宇髄は面白がって余計に頻繁に来ちまいそうだ」
「見せつける?!頻繁に来てくれるのは嬉しいけど、その度に……こんな姿を見られると思うといたたまれないと言うか……むぐ……」
いつまでも話し続けようとする風音の口を手のひらでそっと塞ぎ、上体を上げて恥ずかしさから潤む瞳を見つめる。
「少し静かにしてろ。……あ"ぁ"、吸われて出る声は抑えんな。聞かせてくれ」
まれに見せる実弥の色香漂う表情は風音から思考能力を瞬時に奪い、首元へと頭を埋めていく実弥を止めることなどできなくなっていた。
首元に近付き吐息がかかると、実弥が望むような反応が返ってくる。
ふるりと体が震え、普段では聞けない艶めかしい声が小さく漏れてどうしようも無く実弥の自制心を吹き飛ばしにかかってくる。