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涼風の残響【鬼滅の刃】

第9章 糸と朧


それはそうかもしれないが、命の危険と言う点では大きく違ってくる。
ほぼ毎日任務に繰り出すということは、昨日負った傷が癒えぬ間に新たな任務へ繰り出すということだ。
風音特性の傷薬やどこで知識を付けたのかと毎度不思議に思っている縫合術をもっても、鬼に付けられた傷は簡単には癒えないし痛みが消えるわけでもない。

任務地も綺麗な屋内なんて今まで一度たりともなく、山の中や平地、街中ならまだしも、沼地や廃墟などは環境も悪く下手をすれば傷が膿み熱を出すこともしばしばあった。

それでも目の前であどけなく笑う少女に実弥は小さく息をつき、触り心地のいい髪をサラりと撫でる。

「鬼から風音の全てを守ってやれたらなァ。俺は本気で羽織も肌も……髪の一本まで鬼に触れさせたくねぇって今でも思ってんだ。朝焼けみてぇなこの髪が切られたら……頸を斬るだけじゃあすまさねぇ」

見た目通り柔らかな髪は一房掬っただけでも実弥の手の平の形に沿って流れ、陽の光をふんだんに浴びてキラキラと光を放っている。
本人は絡まりやすくて朝起きた時は大変だと言っているが、その絡まった髪を懸命に解きほぐす姿さえ実弥にとっては可愛らしく映ってしまい、煩悩を捨て去るのに苦労しているらしい。

「ありがとう。私もね、実弥さんの髪が大好きなんだよ?お日様とかお月様の光が当たると、綺麗な銀色になるの。それが少し儚げで神秘的で……ドキドキしちゃう」

実弥が触れているように、風音も手を伸ばして今は銀色の光を放っている思いの外柔らかい髪に触れる。
それが心地良かったのか、実弥の目が緩やかに細まり……手に流れている髪に口付けを落とした。

(真っ赤になってらァ。あぁ……このまま押し倒してェ。押し倒したら拒まれ……ねェわなァ。何でも受け入れやがるから反対に手ェ出せねぇ)

実弥の髪に触れたまま真っ赤になって固まる風音に苦笑いを零し、縁側であろうと構うものかと衝撃を与えないようゆっくりと体を押し倒した。

「肌、直接触れてぇって言えば触れさせてくれるか?」

耳元を擽る実弥の声は僅かに震えており、一瞬何を言われたのかと驚いていた風音の意識を急速に浮上させた。
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