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涼風の残響【鬼滅の刃】

第9章 糸と朧


「実弥さん!ちょっと見てください!」

鬼に有効な薬の研究を進めて早三ヶ月。
風音の血はしのぶが考えていた以上に強力なものだった。

風音や実弥、小芭内の証言から血を被せるだけでも下弦の鬼ですらある程度の時間効力を発揮すると判明していた。
しかもその時から三ヶ月の時が過ぎ、変わらずほぼ毎日任務に赴き実弥監視の元、予知能力の強化にあたっている。

実弥の予測通り能力を使い精度が上がるほど鬼に有効な成分は濃縮されるので、今では下弦の鬼であっても数分は足止めを出来るまでになっていた。

しかし今はその話をするために実弥に駆け寄ったのではないらしく、ニコニコと満面の笑みである。

「何だァ?いい夢でも見たのかよ」

「夢は起きたと同時に忘れちゃった!そうじゃなくって……階級を示せ」

縁側で寛いでいた実弥の横にちょんと座り手の甲を掲げる。
風音の発した言葉、行動は今現在の鬼殺隊での階級を手の甲に浮かび上がらせるものだ。

「丙になったのかァ。良かったじゃねぇか、殺し甲斐ある鬼が任務でわんさか出てくんぞ。……クソ、階級上がる度に任務に同行したくなっちまう」

喜び顔を綻ばせる風音に最後の言葉は小さ過ぎて聞こえていない。
師範の気も知らず無邪気に喜ぶ風音の頬を軽く摘み、僅かに眉を下げた。

「当たり前だがどんどん成長しちまうんだなァ。初めなんて木刀すらまともに握れねェし栄養失調気味で倒れそうだったのに、今じゃいっぱしの剣士にまでなっちまって」

「実弥さんの指導が的確だから、ここまで来れたんだよ。大きな怪我もなく今ここに居られるのは全部実弥さんのお陰様」

そう言って笑顔のままコテンと首を傾げた風音に笑みを返し視線を手に移す。

大きな怪我はなかったものの、日々任務に駆けずり回っていれば多かれ少なかれ怪我は免れない。
それは風音も例外ではなく、今となっては手や着物の袖から覗く腕にまで大小様々な傷痕が残っている。

「大きな怪我はな……勿体ねぇなァ、綺麗な肌してんのに傷だらけだ。嫌じゃねェのか?……女は気にするって聞くんだがなァ」

「んー、気にならないかな?痛みはないし。普通に生活してても赤切れになっちゃう人もいるんだよ?私のはそれが鬼に付けられてるだけ、普通の人と大差ないと思う」
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