第8章 力と忌み血
「ねぇ実弥さん、子供はどうすれば出来るの?」
涙の止まった風音を抱き寄せたまま布団に潜り込んですぐ。
今日は何時間後に眠れるだろうと実弥が心の中で溜め息を漏らして数秒後に新たな試練が与えられた。
「……この体勢で聞くかァ?鈍感で無知で積極的にもほどがあんだろうが。あ"ぁ"……コウノトリが運んでくるって思っとけ。お前にはまだ色々早ェよ」
「コウノトリ……実弥さん、私のことたまに子供扱いする。嫌ではないけど……私も早く二十歳になりたいなぁ。そしたら教えてくれる?」
ふと実弥の瞳を見つめようと顔を上げると、今まで見たことないほどに色香漂う表情をしている実弥がいた。
風音が思わず赤面するほどに。
「年齢の問題じゃねェわ。これ、付けられたくらいで意識飛ばしそうになってる風音には早ェって言ってんだ」
赤さが侵食した首筋に実弥の指が添えられ、今朝方舌が這った場所を思い出させるようにその場所を指がなぞる。
そして指はピリと痛みが走った鎖骨付近で止まった。
「これ……何?伊黒さんに聞いても実弥さんに直接聞きなさいって言われて……これは私が実弥さんのだっていう印?どうやって付けるの?」
浴びせられる質問に実弥は苦しげに眉をひそめ、風音の浴衣の襟元を少しずらした。
「伊黒に聞いたのかよ……そうだなァ、これは俺のだって印だ。こうやって吸って付けんだよ」
ふわりと実弥の灰色の髪が風音の頬や首筋をくすぐり身を捩らせると、今朝方感じたピリとした痛みが首元にもたらされる。
堪らず身を引こうとしてもいつの間にか腕で体を強く抱き締められていたので叶わない。
必死に出そうになる声を抑え震える手で実弥の浴衣を握っていると、ゆっくりと唇が離れた。
「逃げようとしてんじゃねェ。これくら……い?!おい……」
そして風音は教えてもらった通り、実弥の唇が離れた瞬間に自分の顔を実弥の首元に寄せて唇を当てた。
今度はそこにピリとした痛みが走り、実弥の体がピクリと震える。
「……もうやめとけ。これ以上は抑えきかなくなっちまう。頼むわ……」