• テキストサイズ

涼風の残響【鬼滅の刃】

第8章 力と忌み血


「アイツ、自分の欲しいもん言わねぇし買わねぇんだよ。たまに菓子を買ってくるくらいで、自分の給金の大半は食費だってオレに渡してきやがる。……おい!もうすぐ任務地だ。俺と伊黒の間にいとけ!」

我儘を言われないことが少し寂しい……一瞬寂しそうな表情をしたが、任務地が近くなり実弥は気持ちを切り替えて風音を呼び寄せた。

こっそり生暖かい目を実弥に向けてから、小芭内は風音が自分と実弥の間に入れる間隔をあけてやる。
と言うのも今日の鬼は女子を好むらしく、男女数人で剣士を送り込んでも男のみが残され女剣士は姿を消してしまうとの事だった。
近隣の村や街でも一般の女性や少女に被害が出始めたので、こうして柱二人とその同行者である風音がここにやってきたのだ。

「はい!今更なんですけど、同行する女剣士は私で良かったんですか?私の血の匂い、鬼が……」

師範である実弥の指示通り二人の間におさまり懸念事項を口にした瞬間。

誰も気を緩めていなかったし警戒をしていた。
いつ鬼が出てきても応戦出来るよう、風音を引っ張り連れ去ろうと画策しようともすぐに対処出来るほどに神経を尖らせていた。

妙な気配を感じて抜刀し、二人の日輪刀の刃には鬼のものと思われる血がついていたのに、鬼の頭は地面を転がっておらず…… 風音と楓の姿が忽然と消えていた。

「嘘だろ……どうなってやがる?!風音!」

「柊木!どこにいる?!」

大声で叫び名前を呼んでも返事はなく、返ってきたのは静寂のみだった。

「塵屑がァ……ぶっ殺してやらァ!」

小芭内が止める間もなく実弥は、三人で辿り着くはずだった山頂付近にある廃墟へと荒々しい風の如く怒りのみを映して走り去ってしまった。

「柱二人を謀るか。なぶり殺してやる」

今の小芭内の表情は風音でも見たことがないほどに険しく歪んでおり、果てしない鬼への嫌悪が伺える。
そして小芭内も実弥の後に続き、取り残され涙を浮かべていた二羽の鎹鴉を引き連れ廃墟に向かって一気に山道を駆け上がった。
/ 985ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp