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涼風の残響【鬼滅の刃】

第8章 力と忌み血


「そこで……喋っちゃ……ヤダ」

恥ずかしさのあまり肩口に顔を押し付ける風音の頭を抱え込んでやり小さく溜め息を零すと、やはり体がピクリと震え思わず笑みが零れた。

「ーーっ?!本当に……倒れちゃいそう」

恐らくあと一回同じことを繰り返せば風音は卒倒してしまう。
任務前にそれは可哀想だと思いなおし、実弥はようやく風音の首元から顔を上げて庭にいる三人……いや、天元と杏寿郎を睨みつけた。

「お前らわざとじゃねェだろうなァ?!毎度毎度邪魔ばっかりしやがって……コイツをこうさせんのにどんだけ苦労すると思ってんだァ?!普段へにゃへにゃして色気もクソもねェ女だぞ!」

(……間違ってない。間違ってないけどやめてー!)

動悸と息切れの激しい風音が心の中でどんなに叫ぼうと実弥はもちろん、庭にいる三人には届かない。

「わざとではないぞ!前回も今回も宇髄に誘われて遊びに来ると、何故かそうした現場に遭遇してしまうんだ!しかし俺も宇髄も伊黒も一瞬しか見ていないので安心するといい!」

「……宇髄、お前確か忍鼠を従えていなかったか?まさか不死川か柊木に張り付かせているのではないだろうな?」

「待て待て!流石の俺もそこまでしねぇって!可愛い弟や妹みてぇな奴らにそんな無粋な真似するわけないだろ?まぁ、向かってる途中で派手にいい音が聞こえたら全力で走ってるけどな!」

「宇髄テメェ……お前だけ庭に立っとけェ!ぶん殴ってやらァ!」

えらいことになってしまった。
今のところ実弥は風音を支えてやらなければならないので腰を下ろしたままではあるが、風音が落ち着き次第天元へ向かっていく気満々である。

その証拠に体全体に力が入った。

(不測の事態!せっかく遊びに来てくれたのに喧嘩に発展してしまう!)

未だにふわふわする頭で考えついたのはやっぱり前と同じ。

「お茶!入れてきます!喧嘩しないで待ってて下さい!……お茶請け……かりんとう……前に買ったのが」

頭の中と同じく体をふわふわさせて立ち上がり歩き出した風音を止めたのは、今し方まで抱き寄せていた実弥だった。

「また湯呑み割っちまうぞ……ったく、おい……伊黒と煉獄は中入って待ってろ。宇髄はそっから動くな、俺ん家に足踏み入れんなよ?分かったなァ?」
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