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涼風の残響【鬼滅の刃】

第8章 力と忌み血


今日も今日とて風音は緩々。
宿や藤の花の家紋の家ではそれなりに気を張っているようだが、今のように実弥の屋敷にいる時は基本的に全てをさらけ出し実弥に笑顔を向けている。

「そうかィ…… 風音、ちょっとこっち来い」

随分と緊張の解れた風音は手招きしてくれる実弥へと更に笑顔を深め、拒否など微塵も感じさせない満面の笑みで実弥の側にちょこんと腰を落ち着けた。

「呼んでもらえるのって大好き。どうしたの?お茶、おかわりする?」

まだ少し茶の残っている湯呑みに手を伸ばすと、その手を掴まれ気が付けば実弥の胸の中へと引っ張りこまれていた。
何を思っての行動か分からずとも、実弥の温かさはやはり風音に幸せをもたらし、ふわりと身を委ねた。

(あったけぇ……ちゃんと生きてる。失いたくねぇなァ……鬼殺隊なんか抜けさせてぇ)

心の声など漏らせるはずもなかった。
数ヶ月間ほぼ休みなどなくとも風音は不満どころか弱音すら吐かず、力及ばずながらも実弥を目標にひたすら任務に赴き階級も順調に上げていた。

今では鬼殺隊の階級、上から五番目の戊にまで成長し、血鬼術を使いこなす鬼にも遅れを取る事は少なくなってきている。
つまり癸の時とは比べ物にならないほどに任務の危険度も上がり、一人で任務に赴く風音を見送る度に実弥の胸はざわめいているのだ。

「実弥さん、もしかして私に鬼殺隊抜けてほしいなって思ってる?」

思っていたことを的確に当てられ、実弥の肩がピクリと反応する。

「何で人の心ん中分かんだよ……はァ、そりゃあ惚れた女に鬼殺隊いて欲しい男なんざいねぇだろ。羽織も肌も髪の一本でさえ糞鬼に触れさせたくねぇわ」

「何となく……実弥さんの体温が上がったように感じたから。階級、上がる度に喜んでくれるけど、少し寂しそうな辛そうな表情する時があって……そうかなって思ってた」

のほほんとしていても見るところは見ているのだろう。
特に人の機微に関しては村で受けていた扱いにより普通の人よりも敏感で、時折実弥も驚かされることがあるくらいだ。

「お前ってここぞって言う時に言ってくれるよなァ……そのクセ人の過去とか聞いてきやしねぇ。気になんねぇのか?弟の事とか……俺がどうやって柱なったのかとか」
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