第8章 力と忌み血
翌日から本当に実弥は風音を自分の任務や警備に同行させた。
基本的には実弥が主力で動き、風音は実弥の未来を自ら望んで脳内に流し込み被害者を安全な場所へ移動。
その後に実弥と合流してひたすら実弥の援護に徹した。
援護と言っても風音の優先すべきことはどんな状況下でも瞬時に感覚共有を切り離し、自分が望む者だけの未来を見て体を動かすことだ。
初めの方はそちらに気を取られ援護など全く出来ず涙を飲んだこともしばしばあった。
そんな日々を過ごして数ヶ月、すっかり寒くなったある日。
風音にとって初めてとなる合同任務に着くこととなった。
しかも柱同士の合同任務なので、朝起きた時から風音は緊張で体を固くしている。
「風音、今から力み過ぎんなァ。任務する頃にはへばっちまうだろうが。それに今日の任務は伊黒とだ、今更緊張する仲でもあるまいし」
「そ、そうなんだけど!柱二人が任される任務だよ?伊黒さんと会えるのは嬉しいし楽しみだから、それだけが救いとしか思えないや」
風音が実弥の任務に同行を初めてからしばらくして、小芭内や蜜璃が風音に稽古をたまに付けてくれるようになった。
事の始まりは実弥が小芭内に零した一言からだった。
「コイツの動き硬ぇんだよなァ。体の柔さは問題ねぇのに動きがぎこちない」
それならば蛇柱である自分が見てやると実弥に同行する風音の動きを観察してくれたのだ。
そこで導き出されたのが技の構えを意識する余り関節が固定され、動きの邪魔をしているというものだった。
そしてそれを何気なしに小芭内が蜜璃に話した結果、しなやかな動きが求められる恋の呼吸の自分も一緒に稽古を付けると言ってくれ……稽古を付けてもらうに至ったのだ。
「それだけが救いってなァ。俺もいんだろうがァ……何か不満でもあんのかァ?!」
「何を仰る!実弥さんはいてくれるのが当たり前になってるだけだよ。いつも側で見守ってくれて支えてくれて……感謝してもしきれないくらい。いつもありがとう、実弥さん」
思いもしなかった穏やかな笑顔と声音が返ってきてしまい、いかっていた肩がガクリと落ちた。