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涼風の残響【鬼滅の刃】

第8章 力と忌み血


「実弥さんの側が何処より温かくて優しくて幸せだからここにいるの!実弥さんがあの子たちを迎えてくれた時、本当にすごく嬉しかった。お手紙くれたのも嬉しかったし一緒に文字のお勉強した時も幸せで楽しかった。もっともっと強くなって心配かけないように努力する。弱くて頼りなくて泣いてばっかりでごめんなさい」

「違ぇんだ。謝らせたかったわけじゃない。笑顔でいさせてやりてぇのに気が付きゃ泣かせちまってる。俺より優しい奴なんて探さなくても……」

唐突に首に重みが加わった。
かと思えば風音の顔がすぐそこにあり、唇には心地よい柔らかなものが添えられていた。

暫く呆然としていると風音が自分の唇に舌を這わせ、僅かな隙間から遠慮気味に中へと侵入させてぎこちなく舌を絡ませる。

しかしあまりにもぎこちない動きは犬にじゃれつかれているような感覚で、不覚にも吹き出してしまった。

「な、慣れなくて上手に出来ない……でも実弥さんが笑ってくれたからいいかな」

頬を紅潮させふにゃりと笑う風音に実弥は毒気を抜かれ、浴槽のなかに戻りすっかり冷えてしまった体を抱きすくめた。

「上手く出来ねぇでいいんだよ。他の誰かに披露するわけでもあるまいし……はァ、悪かった。あ?何自分の腕つねってんだァ?」

「い、いえ!力が暴走して……先が見えてしまって。痛みで追い払ってたの。勝手に見てしまって……その」

涙目になって俯く風音は顔だけでなく耳まで真っ赤に染まっており、勝手に見えてしまったことからくる謝罪と……先に起こった出来事に恥ずかしがっているように見えた。

しっかりと手拭いを巻き付け直しているところを見ると、不測の事態により手拭いが何かの拍子に解けてしまっていたのかもしれない。
何となく損をした気分になりながら風音の濡れて顔に張り付いた髪を掻き上げてやって額に唇を落とす。

「勝手に見えちまうのは仕方ねェだろ。まァ今後のこと考えんなら防ぐに越したことはないがなァ。で、流れ込んできたもんを止める手段の一つが痛みか?」

「うん、夢から現実に戻ろうとする感覚に近いと思う。あっちの世界からこっちの世界に戻るみたいな。あと感覚の共有は……怒りとか喜びとか、何でもいいんだけど一つの感情で満たして軽い興奮状態に陥らせると切り離せるような気がする」
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