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涼風の残響【鬼滅の刃】

第8章 力と忌み血


「男と女じゃそもそも筋肉量に違いあんだろ。お前が俺みたいな体格なっちまったら……怖ぇわ。顔と体合わなすぎて見た奴慄いちまうぞ」

「そんなに?!慄かられるのはちょっと嫌かなぁ。憧れはあるけど……諦め……ひぅっ!ん……」

突然うなじから背中にかけてこそばゆいようなむずむずするような感覚が走り、風音の体が震え浴槽の中の湯が音を立てて跳ねた。

「こんな綺麗な肌してんのに……鬼殺隊なんて血なまぐせぇとこに入っちまったんだなァ。誰にも見せたくねぇ……傷付けさせたくねぇ。鬼に消されちまうんじゃねぇかって思うと、生きた心地しねぇんだわ」

そう言葉を紡ぐ間もずっと背中を指が伝い、風音の意思とは関係なく体が震え頭の中がぼんやりとしてくる。
そこに実弥の悲しげな声音が合わさり、風音の瞳に涙が滲みだした。

「実弥さん……どうしたの?ん……私は消えないよ。実弥さんが望み続けてくれるなら……ずっと側にいさせてほしいと思ってる。だから……そんな悲しい声出さないで?」

「お前、今日のことで考えなかったかァ?あの液体が毒だったら、酸みてぇに体溶かしちまうもんだったらってよォ。頭から被った時点で死んでたんだぞ?」

実弥の言葉にハッとした時には体が浮かび上がり、気が付けば風音の瞳には実弥が映し出されていた。

「考えてなかったろ?危機感もっと持たねぇと鬼殺隊なんざやっていけねぇぞ。鬼殺隊の柱がずっと欠員だったのはそういうこった、消えねぇってんなら心配かけんな」

「申し訳……ございません。私……鬼殺隊にはいたいけど死にたく……ないです。まだ何の役にも立ててない。実弥さんの役にも鬼殺隊の役にも……立ててないのに……」

泣かせるつもりなどなかった。
ほんの少し前まで無防備な姿をさらけ出す風音にうかされていたのに、いつの間にか諌めてしまっていた。
大切にしてやりたい、笑顔にしてやりたいのに最近では泣いた姿を見ることばかりだ。

「なァ、俺の側にいて幸せか?」

ついに頬へと涙を流させてしまった。
罪悪感や後悔が胸の内に渦巻き堪らず浴槽から出ようと立ち上がると、風音は行かせるまいと体にしがみついてきた。
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