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涼風の残響【鬼滅の刃】

第8章 力と忌み血


ところ変わって一足先に任務を終わらせた実弥が腰を落ち着けている屋敷の居間。

べたべたの体を懸命に引き摺りながら帰路に着いている風音を待っているところだ。

「何の嫌がらせだァ?手紙べたべたじゃねェかァ」

帰る途中で爽籟から手紙を受け取った実弥の第一声がこれだった。
嫌がらせではないと爽籟から説明を受けたのだが、爽籟自身もなぜ風音が見るも無残な姿になっていたのか分からず、一人と一羽で首を傾げていた。

「血鬼術かァ?それとも変なとこに突っ込んで得体の知れねェもん体に浴びたのかァ?……風呂の前に井戸で落としてやんねぇと」

多くの剣士に恐れられている実弥であるが、根はとても優しく面倒見がいい。

泣きそうになりながら色んなものを引っ付けて帰ってくるであろう風音の為に風呂を沸かしてやり、井戸の前に盥を運び中に水を満たして門の外へと移動した。

「遅ぇ……まさか変な輩に絡まれてんじゃねェだろうなァ?!……いや、こんなべたべたした液体絡ませてる女をどうこうしようって輩いねぇか」

余程の物好きでない限り、ブーツに落ち葉をたくさん引っ付け抜刀の構えを取ったままの少女など襲いたいと思わないだろうし、何だったらあまりの不気味さに逃げていきそうだ。

まさかそこまで酷い状態にあると知らない実弥は、夜の街に響くそれこそ不気味な音に警戒を強めた。

街の中に落ち葉などないのに、落ち葉を踏み締め歩く音。
夜となれば街であっても鬼が出没してもおかしくないので日輪刀の柄に手を当ていつでも応戦出来る体勢を整え、じりじりとにじり寄ってくる音に緊張を走らせ気配を探り……柄から手を離して駆け出した。

曲がり角に差し掛かり音のする方を確認すると、実弥が予想していた人物が予想した通りの顔で……予想外の様相で姿を現した。

「お前……蓑虫みてぇじゃねぇかァ。泣くな泣くなァ」

「実弥さん……こんなのあんまりだと思うんです。血鬼術を被った私が悪いんですけど……こんなことってありますか?山の中で転んだらこのザマです!うぅ……」

全身落ち葉まみれの泥まみれ。
不幸中の幸いと言うべきか目立った外傷がないので、目の前の少女が涙を流しているのは外傷による痛みからではなく、精神的なものだろう。
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