第8章 力と忌み血
「……分かったから落ち着いたら薬飲めよ。持ってきてんだろ?」
風音の望むまま、体を冷やさないように布団の中で抱きすくめてやると、風音は安心したようにホッと息をついて再び瞼を閉じた。
「うん。ワガママ聞いてくれてありがとう。……さっきまで実弥さんに助け出してもらった時の夢を見てたの。それで気付いたんだけど、私……実弥さんに一目惚れだったみたい」
突然の告白に実弥固まる。
「お前……こんな時に何言って……」
「フフッ、こんな時だから言えるんだよ。……こんな時じゃなくても言ってそうだけど。あの時、実弥さんは聞いたことのない怖い言葉を使ってたのに、私を見る瞳はすごく優しかった。優しい実弥さんを一目見て大好きになってたみたい。だから実弥さんの脚の上で寝ちゃったんだと思う」
そう言えばそんなこともあった。
家の中の説明をしている途中で器用にも眠りにつき、朝まで実弥の脚の上で眠りこけていた。
「あの時、私が先に目を覚ましたでしょ?そこにね、爽籟君が来てたくさん話し掛けてくれたの。お名前教えてくれたり家の中のどこに何があるかとか……私に染み付いたお薬の匂いの理由を聞いてくれたり」
ようやく爽籟と風音が仲良くなっていた理由が判明した。
実弥が寝ている間、知らず知らずの間に仲を深めていたらしい。
「俺の方が先に好きになられたのに、先に爽籟と仲深めてたのかよ。あんま妬かせんなァ……爽籟に当たっちまうだろうが」
「当たっちゃダメだよ。爽籟君泣いちゃう……ん、ちょっと待って。フフッ、実弥さん鬼一瞬で倒しちゃった。腕、切ったら痛いのに。無茶しないで……私は大丈夫だから」
普通に話を続けるものだから、実弥の思考が追い付かなった。
しかし話の内容から不安定になった風音の脳内に、再び勝手に実弥の未来が流れ込んだのだと理解すると慌てるのは当然だろう。
「何を呑気に言ってやがる!やめろ……お前に痛い思いさせたくねェ……」
「なんかね、痛み感じないの。どうしてかな、今まで上手くいかなかったのに、感覚の共有……切り離せたみたいだよ。大丈夫、今は見えてない。だからもう少し……ギュッてしてて」