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涼風の残響【鬼滅の刃】

第7章 初任務と霞柱


実弥に街まで運んでもらい解き放たれる直前、風音は実弥からお小遣いをもらった。
なんでも

「好きな物買って宿で待ってろ。一緒には回ってやれねぇけど、好きな物買って好きなことしてたら気ィ紛れんだろ」

と、父親のことで気を揉んでいる風音への実弥なりの気遣いだ。

「お小遣い……多いよ。結局おはぎしか買えなかった。実弥さんが命を懸け人を救ったからこそお館様からいただけたお給金、簡単に使えない」

しかしせっかくもらったお小遣いは実弥の好きなおはぎを購入するだけに終わり、今は宿の一室で自分の鞄を前に静かに待っているところである。

「お父さん……どこにいるんだろ?私を探してるって言ってたから、前に遭遇した場所で会えたりしないかな。ここからだと……日が暮れる前に帰れるけど、流石に怒られるか」

今日は既に実弥を怒らせてしまっている。
更に怒らせるようなことをすれば今度こそ本当に愛想を尽かされてしまう恐れしかないので、それは思いとどまって鞄の中に手を突っ込んだ。

中から引っ張り出したのは実弥が預かっていたはずの『コロ』と染め入れられた羽織だった。

「持ってきちゃった」

周りから見ればふざけた羽織でも風音からすれば実弥と揃いの愛着の湧く羽織に違いない。

実弥の洗濯の終えた着物を箪笥にしまおうとした時、偶然にもその中に丁寧に畳まれて保管されていた『コロ羽織』を見つけ、叱られるのを覚悟でこっそり持ち出して自分の部屋に移動させていたのだ。

今も無くなったことに実弥は気付いていないので、自分の箪笥の中に入れたことすら忘れているものと思われる。

「どうせなら丸っきりお揃いにしてくれたらよかったのに。でもそれだったら今の羽織とどっちにしようか迷ってたか」

今羽織っているものも風音のお気に入りだ。
大きく鮮やかな菊が染め入れられている羽織はやはり美しく、何より実弥が風音に似合うものをと見立ててくれたものなので、着ているだけで実弥の優しい気持ちが伝わってくるように思える。

そんな羽織を羽織ったまま、胸に例の羽織を抱いてコロンと畳に転がり呆然と天井を見つめた。

「私が倒せないなら……やっぱりお父さんは柱のどなたかが対処してくれる……んだよね。誰にも負担掛けたくないな……」
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