第7章 初任務と霞柱
「……お前はちょっとそこでそのまま悩んでろ。何か思いついても喋んなよ、お前の思い付きはお館様のお身体に悪影響を及ぼしかねねぇからなァ」
酷い言い草だ。
しかし悩み続ける風音は特に悲観することなくキリッとした表情で大きく頷き、実弥に言われた通り大人しく悩むことを再開した。
「えぇ……扱い方よ。よく嬢ちゃん怒んねぇな。自分の事なのに口挟むなって言われてんだぞ?」
「うっせぇ。これでいいんだよ、父ちゃんのことで落ち込んで泣いちまうより、これからどうすっか考えて悩んでる方がコイツにとって有意義だろうが。はァ……お館様、お待たせしました」
風音を落ち着かせるまで静かに見守ってくれていたお館様へ頭を下げると、優しく微笑んでゆっくりと首を左右に振ってくれた。
「構わないよ。私も風音の泣き顔を見るのは辛かったからね。さて、風音の力は皆の知るところだなのだけど、この子の力が安定次第協力してやってほしい。この子は近い将来必ず代償を克服する」
「え?!……すみません悩んでおきます」
お館様の言葉に反応して何か発言しようとした風音は実弥に睨まれ、すごすごと上げかけた腰を下ろし悩むことを再開……した風を装った。
自分の事なのに発言すら許されなかったにも関わらず、不満を漏らさず悩んでいるフリを続けてはお館様に意識を集中させる姿に、実弥や何事にもあまり関心を示さない無一郎を除いた者たち全員が笑いを堪えた。
「フフッ、話しを続けるけど、その時はこの子の身を守る意味も込めて協力してやってほしい。先を見て鬼に対して有効な血の成分が上がるのは……間違いないみたいだからね。これは私の独り言なのだけど、新しい事を始める時は実弥やしのぶの指示に従うことが大切だよ」
「はい!お約束します!実弥さんを悲しませるようなことはしないと実弥さんともお約束……しました……ので。独り言です」
独り言に独り言で返す風音に何名かが吹き出し、暫く懇々と実弥を始めとしてほぼ全員とお館様が突っ走るなと注意を言い聞かせた後、少ししょぼくれる風音を街へと解き放った。
宿に戻るか放浪するかは風音次第である。