第7章 初任務と霞柱
なぜ失うわけにはいかないのか……先を見る力は制約が多く代償も大きい。
その代償をどうにかするべく奮闘はしているものの、未だに上手く扱えず咄嗟に反応できていないのが現状である。
血に関してもただ鬼にとって毒なだけで、しのぶに協力を要請して返答待ちの今の状態では鬼を毒で倒したり自分から鬼が全力で逃げ出す以外はこれと言って特筆したものもない。
こういったことから風音が首を傾げると、お館様の代わりに実弥が答えてくれた。
「鬼の先は見えねェっつってたが、それがこれからも変わんねェって保証はどこにもないだろォ。お前の毒の血を克服する鬼が出て来たらどうする?その鬼がお前を喰って、人や鬼に関係なく先を見る力を身に宿しちまったら……こっち側が圧倒的に不利になんだろ」
「それは……そうだけど。……じゃあまだ仮定の話だけど、先を見て毒の成分?みたいなのを強力にしていけば……喰べられないの……では?」
「代償を克服出来てねェ今の状態でか?んな事してたら、お前の命いくらあっても足んねェわ」
何故こうも上手くいかないのか。
生まれ持った力なのに何故上手く扱えないのか。
こんな事になるなら人目なんて気にせず幼い時から力を使用していればよかった。
後悔ばかりが押し寄せてくるが今更後悔してもどうにもならないし、過去に戻ってやり直すことなど出来はしない。
それならばこれからどうするかを考えるまでである。
「父が私の名前を呼んでいるのも……ただうわ言なだけでなく、この使い勝手の悪い力を欲しているからだとも考えられますね。私……鬼の世界で名前が知れ渡っているんじゃ……全くもってうれしくないことですけど」
これから先鬼に狙われるかもしれないと知り落ち込むものとばかり思っていた実弥やお館様、そして事前に今の内容を聞いていたであろう柱たちは、難しい顔をして悩み出した風音に驚くと共に安堵した。
実弥がお館様に
根性が座っている
と言うだけのことはある。
懐き笑顔で実弥の後をついてまわっては怒鳴られ叱られ……落ち込んだかと思えばすぐに笑顔に戻り、また実弥の側にぴたりと寄り添う。
日々の稽古や鍛錬でも怒鳴られようが叱られようが、拗ねることなく実弥の言葉に従いほぼ根性で乗り切ってしまう。