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涼風の残響【鬼滅の刃】

第7章 初任務と霞柱


優しく明るい花の育手だから自分を罵倒などしないのだろうなと何となく分かっていたが、助けられなかったのに礼を言われるとは思っていなかった。

自分より遥かに長い時間を共に過ごした少女を亡くし辛いはずなのに、ただ花の体を運んだだけの自分に礼を告げられ、不甲斐なさや感謝や後悔などが入り交じり目の奥を刺激して涙が溢れて来た。

「私には……もったいないお言葉です。私がもっとしっかりしていれば……生きていたかもしれないのに。その……差し出がましいかもしれませんが、花ちゃんが生きれなかった分、鬼をたくさん倒します。お父さん……父のこともきちんと自分でケリをつけて……お二人に対して恥ずかしい姿を見せないように……致します」

剣士の雛である風音の精一杯の決意に頷き返すと、お館様は実弥へと視線を移動させた。

「実弥、柱の身でありながら風音をここまで守り育ててくれたこと、とても嬉しく感謝しているよ」

「いえ、柱として当然のことをしたまでです。風音はこの通りよく泣きますが、根性は座っているので育て……やすかったと思います」

チラと風音に視線をやると、悲しみに瞳を涙で濡らしていたはずの少女は小さく笑みを浮かべ頬を赤く染めている。
泣いているのか笑っているのか微妙なところだが、何となく雰囲気が和らいだので喜んでいるのだろう。

そんな風音に小さく微笑み返すとお館様へと視線を戻しこうべを垂れる。

「……これからは継子として迎え入れ育てる所存です」

「頼んだよ。君のことを風音は信頼しているみたいだからね……どうか支え導いてやって欲しい。あと一つの要件、風音の父上のことがあるから。風音、聞いてくれるかな?」

風音の笑顔がお館様の言葉によって瞬時に消え去った。
しかし風音が鬼殺隊に身を置く大きな理由の一つに違いないので、胸の痛みに蓋をして言葉を紡いだ。

「はい。どんなことも受け入れます……私の父の頸は私が……斬ると決めておりますので。父のこと、どうか教えてください」
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