第7章 初任務と霞柱
そうして実弥のご機嫌が悪いまま全員でお館様の屋敷へとやって来た。
例の如く一般剣士である風音は目を瞑ったまま運ばれていたのだが、その運ばれている最中も今庭で待機している間も柱たちから生暖かい目で見られている。
「実弥さん、皆さんの視線が優しいね。やっぱり皆さん大好きです!優しくて強いなんて私にとって憧れで尊敬出来る方々です」
「お前の頭の中は幸せだなァ!どう見りゃコイツらの視線が優しいって思えんだよ!……悲鳴嶼さんまで生暖かい目になっちまってるじゃねェか」
今まで事の成り行きを見守っていた行冥も今や実弥と風音に生暖かい視線を向けて、二人の関係性を喜んでいるように見える。
「一人の女子にこうも慕われるのはいい事だ。不死川の雰囲気が心做しか穏やかになって私も嬉しい」
両手を合わせ拝まれるものだから何とも複雑な気持ちになってしまう。
「実弥さんは本当に優しいんですよ!よく叱られますけど、何だかんだで甘やかせてくれますし。こうして悲鳴嶼さんや柱の皆さんと出会えたのも、実弥さんが私を拾い育ててくれたからで……人は優しいものなんだって教えて……むぐ……」
「お前この状況でよくそんな口回るなァ!いい加減にしとけよ……黙っとけェ!」
口を押えられ怒鳴られシュンとする風音にも顔を真っ赤にする実弥にも柱たちが向ける視線はやはり生暖かい。
そこへ無一郎が歩み寄り風音の羽織の袖をツンツンと引っ張った。
「ねぇ、聞きたいことあるんだけど」
就任式から一貫して物静かだった無一郎が興味を示した風音を実弥は解放し、ふいっと向こうへ行ってしまった。
実弥の様子が気になるものの、無一郎に話しかけてもらえたことが嬉しく笑顔で応える。
「はい、私でお答え出来ることなら何でも聞いて下さい」
すると表情を動かさないまま腕をゆっくり上にあげて、その手を風音の頬にそっと当てがった。
「過去は見えるの?過去が見えるなら見て欲しい」
頬に触れられた驚きより、自分では力になれない願いに心が悲しい重さに侵食される。
「すみません……過去は見れないんです。私が見られるのは未来だけ……力及ばず申し訳ございません」