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涼風の残響【鬼滅の刃】

第7章 初任務と霞柱


皆の祈りは届きそうにない。

風音は実弥によって食事処の外壁に追い詰められ、背後はもちろん左右も腕で遮られているため逃げ場はない。

「俺も言ったよなァ?近しい奴ほど危険から遠ざけてぇって。父ちゃんのことがなけりゃあお前を鬼殺隊に関わらせるつもりなかったってよォ」

「はい。ちゃんと覚えてます」

覚えている癖に父親と関係の無いところで危険をおかそうとする風音に実弥は苛立ちを隠そうとせず、外壁に当てていた拳を叩き付けた。

「じゃあ何でわざわざ俺がブチ切れることしやがんだァ?!放り出されてぇのか!」

実弥の言葉に一瞬、風音の瞳が悲しげに揺らめく。
ずっと一緒にいたいと想い、誰よりも慕っている実弥からの今の一言は勢いが余って言ったのだと分かっていても堪えたのだろう。

しかし一瞬後には穏やかな表情に戻り、僅かに震える手で風音は実弥の頬にそっと触れた。

「怒っても仕方ないですよね。私は……それだけの事を実弥さんにしているのですから。……覚えていますか?鬼を滅ぼして実弥さんの穏やかな笑顔を見ていたいって言ったこと。私はね、実弥さんの笑顔が一番大好き」

風音は一度言葉を切り震える声を抑えるように深呼吸を零し、未だに険しい表情のままの実弥をしっかり見据える。

「命を投げ出そうなんて考えていません。でも鬼狩りに対して有効なものは何でも活用するべきだと思います。だからこそ無知な私個人で動かず、胡蝶さんに意見を求めました。ねぇ、実弥さん」

「あ"ぁ"?」

「私は実弥さんに守られるだけでいい女の子じゃなくなりました。未熟者とは言え、鬼から人を守る剣士です。その人の中に実弥さんも入っているんです。私を……弟子を信じて下さい」

何故こうも感情的になってくれないのか。
自分が感情的になっている時こそ同じように感情的になってくれれば、怒鳴りつけ放り出せたものを……と前にも同じようなことがあったことを思い出しながら溜め息をついた。

(コイツの根性……相変わらずすげェなァ。震えてっけど……俺に怯えてじゃなく、放り出されたらどうしよう……って恐怖から……だよなァ。クソ……こっちだって好き好んで言ってねェんだよ……)
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