第7章 初任務と霞柱
「む……しないと不死川と約束したならば何も言うまい。だが風音、俺とも約束をしたのだから一人突っ走って無茶をしてはいけないぞ?」
「そうですよ。いくら鬼に有効だからといって血は無限ではないのですから。それに体に傷が残ってしまえば不死川さんが悲しんでしまいますよ」
ぐうの音もでない。
傷痕が残ったとして実弥が悲しむのか?そこらへんは風音としても本人に聞いていないので分からないが、すぐに医者を呼んでくれたりするところを鑑みると女子だからと配慮はしてくれているのかもしれない。
「はい……あ、あの。さすがにたくさんの血を使うことは出来ないですけど、少しずつ何かに役立てられないですか?……実弥さん、目が怖いです」
「テメェは何考えてやがる?俺はやめとけって言ってるよなァ?!」
頬も掴まれていないし頭も鷲掴みにもされていない。
されていたならば多少実弥に余裕がある状態だが、今は隣りに座る風音を見下ろし本格的に怒りをあらわにしている。
やめとけと言われているのに何かに使いたいと言っているのだ、怒りをぶつけられても仕方がないのだが、風音も無闇矢鱈と考えなしに言っているわけではないようだ。
「言われてますし師範の気持ちも十分理解しているつもりです。でも私に出来ることで鬼殺隊の役に立ちたいんです。お父さんの事が判明する前から私は生まれ持った力で役に立ちたいって言っていました。その気持ちは今も変わっていません」
柱の継子として、鬼殺隊の剣士として言葉を紡ぐ風音に向ける視線は変わらず険しい。
鬼殺隊の柱の中でも剣士の多くに恐れられている実弥に対して目を逸らさず、自分の意見を真っ直ぐ伝える風音に全員がハラハラしながら見守っていると、実弥は風音の腕を掴んで立ち上がった。
「外出る。お前らついてくんじゃねェぞ」
「……すみません、少し席を外します」
険しい表情の実弥に引っ張られる風音の表情は対照的に穏やかだった。
「嬢ちゃんすげぇな。全く不死川に怯えてねぇ」
「柊木はいつもあんな感じだ。俺が見る限り柊木が不死川をおびえたことはなかったはず」
それでも……どうか怒鳴り声が響いてきませんようにとほぼ全員が祈った。