第7章 初任務と霞柱
「私も実弥さんの寝ている姿を見るのは久方ぶりです。よっぽど眠かったのではと思います。私が隣りにいるから……だと嬉しいけど……あ、えっと感覚の共有ですよね?何となくコツが掴めてきたように思います。最終選別で……色々あったので危機感を覚えて真剣に考えたんです」
最終選別序盤で花の先を見た時に命の危機を感じた。
治療は最低限、自分が出来ることしか出来ない。
医者など近くにおらず輸血しようにもそんな術など知らず必要な医療器具も何もない。
たまたま運良く失血死しなかっただけなのだ。
しかも生きていて欲しいと願っただけで自分から見ようとしていなかったので、本当に真剣に考えなければ普通の生活すらままならなくなってしまう。
「今は大丈夫なのか?爽籟から回ってきた報せを聞いた時は心臓が止まるかと思ったのだぞ?痛みだけでなく傷まで共有するなど……俺たちが近くにいても問題ないのだな?」
「あの時は杏寿郎さんにも皆さんにも心配をお掛けしてしまって……情けない限りです。今は大丈夫……かと。……あ、少しお待ちを」
大丈夫だと言ったわりには苦しそうに見える。
眠っている実弥を除いた柱がハラハラと見守る中、この状況がどういう状況なのか分からない一人が口を開いた。
「ねぇ、何を待ってるの?」
ずっと無表情で食事を取り心ここに在らずな状態で何となく柱たちの様子を見ていた霞柱、時透無一郎だ。
まるで鬼が出るのではと切迫した雰囲気に違和感を感じたのかもしれない。
「風音ちゃんは自分以外の人の未来を見ることが出来るんです。鬼を相手にする私たちにとってとても有益な力ですけど、見る対象が傷を負えばその痛みを風音ちゃん自身も共有してしまい、更にはその傷がある一定以上の傷の場合……」
「コイツにも傷を負った奴と同じ場所に傷が出来ちまう。おい、今どうなってんだ?……こっち向け!」
ただならぬ雰囲気を感じ取ったのは無一郎だけでなく、眠っていたはずの実弥も同じくだった。
隣りで眉をひそめている風音の頬を片手で掴み自分の方へ向ける。
「誰のが見えてんだァ?」
「たぶん……柱の方全員……かと。視点がさっきから色々移動するから定まらなくて。私……お館様にお呼ばれしていただいているの?お庭に私が皆さんと……座ってる」