第7章 初任務と霞柱
言葉とは裏腹に後ろから抱きすくめてくれる実弥の力は優しく、風音は満面の笑みで腕をキュッと掴み温かな胸に背中を預けた。
「すごい!二ヶ月で柱に……私は1年経ってようやく鬼殺隊に入隊なのに。不甲斐ない弟子……って思わない?」
「柱なんてそもそも刀握り始めて二ヶ月でなれるもんじゃねぇって。未経験のお前が一年で鬼殺隊入ったのも十分異例だっつの。女の身でそんだけ出来りゃあ上々だ。てかお前、よく俺の扱きに耐えたなァ」
褒められ益々笑顔を深めた風音は実弥の胸に背を預けながら顔を上にあげ、穏やかな表情をした実弥を見つめる。
「何度か実弥さんに、出来ねェならやめちまえ!って木刀取り上げられた時は泣きそうになったけどね。でも私には実弥さんしかいなかったし、大きな目的があるからお稽古自体は苦じゃなかったよ。辛いことも経験したけど、実弥さんについてきてよかったって思ってる」
師範として喜ばしい言葉からの更に追撃。
「これからも公私共によろしくお願いします、実弥さん」
「……ーーっ。風音、この格好この状況でそんなこと言ってくれんなァ。俺に対して気ィ緩めすぎだ」
何度か同じことを言われているが両親が健在だった時はこれが普通だった風音には加減が分からない。
少し頬を赤く染め何かに耐えているような実弥の表情を目にしても、何に耐えているのかよく分からないのだ。
「好き過ぎて緩々になってる自信しかないけど……実弥さんは苦しい?ごめんね……苦しめるつもりはなくて……好きだなって思ったらつい口走っちゃうし和んじゃう」
「苦しんでるに違ぇねェが……はァ。いや、お前にはまだ早ぇしそのままで構わねぇよ。あれだ、可愛いって柄にもなく思っちまうから、お前は俺だけのもんだって印つけたくなっちまうんだ」
風音の背中に感じる体温や心拍が上がり、それに影響されたのか風音のも同じく上がっていく。
「?いいよ。印が何か分からないけど、私は実弥さんにならその印っていうの付けてもらえたら嬉しい。可愛いって思ってもらえてるっていうのと同じくらい嬉しいよ」
二人して体温を上げて寄り添っているものだから余計に体が熱くなるし、実弥に至ってはそれに伴って脳までのぼせ上がってしまうから困ったものである。