第7章 初任務と霞柱
お財布を忘れた風音にそれぞれの店主がそれぞれの食材を分け与えてやるくらいだ、優しいのももちろんあるが元々実弥が好かれていたことに加え愛想のいい同居人が増えたとなると店主たちも嬉しかったのだろう。
忌み嫌われてきた風音にとってそれはとても嬉しく、心地よいものなのだ。
「何もねェ家だけどなァ……欲しいもんあんなら好きに増やせよ?俺は女が喜ぶもんはいまいち分かんねェからなァ」
「ここには実弥さんがいてくれて、実弥さんや柱の皆さんが植えてくれた藤の木があるからそれだけでいい。また皆さんに会いたいなぁ。藤の木のお礼したい」
ああでもないこうでもないと小さく柱たちへの礼を考え出した風音から出ているのは悲しみではなく楽しみなので、とりあえず心は乱されていなかったのだと胸をなでおろした。
「礼は言うだけで十分だろ?……会いてェなら明後日に新しい柱の就任式あっから一緒に来るかァ?その後に柱合会議入ってるから終わるまで街なり宿なりで待ちぼうけ食らうだろうがなァ」
「私の血を使った鬼避けとか……え?あ、うん!行きたい!邪魔にならないならお供させて欲し……う……実弥さん、ちょっと苦しい。腕の力強いような……!じゃあ私も……」
と強く抱きついてきそうだった風音の体を離し、傷に響かない程度に頭突きをかましてやった。
「違ェだろォ!何がじゃあ私もだァ?!誰がテメェの血使った鬼避けなんて欲しがるかよ!あ"ぁ"、一回作って渡してみたらどうだァ?お前、俺だけだと効果薄いんでなァ……全員からこっぴどく叱られたら馬鹿な考えも浮かばなくなるだろ。作れ作れ」
「……やめとく。前に杏寿郎さんにも同じようなことで止められたし、二度目は……ないと思うから。それより新しい柱の人ってどんな方?」
常習犯だったのかと思わず叱りつけたくなったが、一応怪我人であり気持ちも完全に回復していない少女に涙を流させるのが憚られ、どうにか気持ちを落ち着かせて風音の体をくるりと反転させた。
「ったく。大概の奴は俺が睨むだけで怯むってぇのに、お前は全っ然堪えねぇから何か方法考えるわ。はァ……時透無一郎っつってまだ13くらいの子供だ。けど刀握って二ヶ月で柱になったとんでもねぇ奴」