第7章 初任務と霞柱
屋敷に戻ると爽籟と楓が待っていたと言わんばかりに玄関先で待機していた。
それからしばらくして医者が到着したので傷を診てもらうと、幸いにも縫うまでには至っていないとの事だった。
しかししっかり完治するまで処置をしなければ痕が残るので、こまめに傷口の消毒と傷薬を塗るようにと言われた。
そしてどういうわけか医者が帰宅した後、珍しく実弥が脚の間に風音を向かい合うように座らせ抱きすくめていた。
(これは……嬉しいけどどうしてだろう?もう落ち着いたのに……慰めてくれてるのかな?)
帰りに随分と甘やかせてもらったので風音としては十分なのだが、せっかく珍しい格好で抱き締めてくれているので、これは好機だとここぞとばかりに抱きつき返す。
「お前……考えてることわかり易過ぎだろ。今しかねぇ……みたいな」
「正解!脚の間はなかなか機会がなかったから。嬉しさが溢れ出た結果だよ。どうしたの?何かあった?」
あったと言えばあった。
自分の任務が思ったより早く片付いたので、初任務にあの村へ赴いた風音が心配になって全力で向かい、到着して一番に目にしたのは助け出した男に罵倒されても平気な顔で無視していた姿だった。
かと思えば自分のことを悪く言われた瞬間、男をうつ伏せに押し倒し拘束した姿を見た時に驚いたことが。
しかしこの件については風音本人もどうにか折り合いをつけて落ち着いたので、今こうしているのはまた別の話だ。
「どうもこうもねェ。家、壊されてたんだろ?楓から聞いた」
もう一生訪れることのない村にある家といえど、あそこは風音にとって母親と長い年月共に生き生活をしていた家だ。
何年も経過していたならばいざ知らず、まだ一年も経過していないのに壊されてしまっていた。
あまり気にしていないようだったと楓から聞かされたが、そんなに簡単に割り切れるものではないと思い至ったが故の今の格好である。
「あぁ……うん。鬼の母娘が住んでいた家だから仕方ないよ。確かに初めて見た時は結構な衝撃だったけど、今は実弥さんが私の帰る家を与えてくれたから大丈夫。今はここが一番好き、実弥さんがいてくれるし、街の人も優しくしてくれるから」