第7章 初任務と霞柱
運ばれてしばらくすると落ち着きを取り戻し涙も止まったので自分で走ると言ったのだが、こっちの方が早いと言われてしまい何も言い返せず現在も風音は実弥に運ばれたままである。
「実弥さん、私の血って自分で言うのおかしいかもしれないけど……猛毒だったよ。血を被った鬼はもがき苦しんでのたうち回っちゃうから怖い。私の血の成分大丈夫かな?」
突然の告白と質問に怒ればいいのか答えてやればいいのか脳内でぐるぐる回り、結果……とりあえず立ち止まって怪我の確認をすることにした。
「血ィ被らせるってどんだけ深い傷作ってんだ……怪我したとこ出せ」
なぜか冷や汗をかきながら涙目になる風音を地面へと下ろし見つめ続けていると、ふいと視線を逸らされてしまう。
「もう手当てしたから大丈夫だよ。明日には塞がってるような傷だから……見なくて大丈夫」
見なくていいではなく見せたくないのだろう。
その証拠に視線を実弥から逸らしたまま包帯を巻いている腕を自分の背に隠した。
「はァ……怒んねェから腕出せ。医者に診せるかどうか判断しなきゃなんねェだろ」
無事に帰れと言われた手前呆れられ叱られるのではと視線を恐る恐る実弥へ向けて確認すると、想像していた呆れや怒りではなく焦燥が感じ取られ風音は慌てて腕を前に出して包帯を外した。
すると出てきたのはやはり深い傷で、このまま放っておけば傷痕が残ってしまうようなものだった。
「……明日に勝手に塞がるもんじゃねぇだろ、これ。自分で切ったのかァ?」
「ううん。血鬼術が風の刃みたいなので。一応受けて防いでたんだけど、やっぱり実弥さんみたいには上手くいかなかった。鬼に切られてただ血を流すの勿体ないなって……それで頭から被ってもらったの」
辛うじて血は止まっているものの、傷は痛々しく見ている実弥に痛みを伴わせ眉をひそませた。
「勿体ないってなんだよ。まァ……その気持ちは分からんでもねェけど。とりあえず家帰んぞ、爽籟に医者呼んできてもらっとくから診せて処置して貰え、いいなァ?」
一応聞いてはくれているが今の状況で断れば間違いなく叱られる。
せっかく叱らないでいてくれた実弥をわざわざ怒らせたくなく、風音は頷き医者に診て貰うことにした。