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涼風の残響【鬼滅の刃】

第2章 柱


「風音、一つ聞きてぇ事があるんだが」

風呂から上がり実弥の作った朝餉を目をキラキラさせながら頬張る風音は、口の中にあったものを喉へと流し込んで首を傾げた。

「聞きたいことですか?私に答えられることなら」

「分かる範囲でいい。お前の父ちゃんは十中八九、鬼殺隊の剣士だ。しかも全集中の呼吸 常中を使えて人に教えられるってことは、柱か柱に準ずる地位にいたはずだァ。覚えてることはねぇか?」

キラキラと輝いていた瞳はなりを潜め、手に握られていた箸を箱膳の上にカタリと置いて実弥を見つめる。

「まだ子供だったからあまり覚えてないのだけれど……お父さんはある日大きなお仕事が入ったから数日は帰られない。知らせが届いたら家を離れて違うところで生きてくれって言って出て行ったの。そして帰ってきてくれなかった」

大きな仕事と言うくらいだ。
鬼の中でも強い力を誇るとされている十二鬼月……それも上位の鬼と対峙して殉職した可能性が高い。

「そうか。辛いこと思い出させて悪かったなァ。んで、嫌じゃねぇのか?俺のそばにいれば父ちゃんのこと思い出すだろ?」

「いえ……どちらかと言えば思い出せるから嬉しいかな?お父さんと一緒に剣のお稽古したことがあったなぁ……とか、刀触って叱られたなぁとか思い出せたんです。そう言えば一個だけ技を出せたことがあったような」

風音の父親は娘に何を目指して欲しかったのだろう。
父親が亡くなったことにより風音は母親の薬作りに興味を持ったわけだが、生きていれば娘も鬼殺隊の剣士になっていたかもしれない。

「……マジかよ。俺の刀と同じ色っつぅことは風の呼吸だよなァ?技名とか覚えてねぇのか?」

流石にそこまでは思い出せないようで風音は首を左右に振った。

「見たら思い出せるかもしれないけど、すごく前の事なので……当時は褒めてもらえるのが嬉しくて、本気でお父さんと一緒にお仕事したいって思っていたんですよ」

その表情は当時を思い出したのか穏やかな笑みを浮かべていた。
僅かに目は柔らかく細められ口元は弧を描いており、年相応の女子のあどけない笑顔だ。

「お前にとって父ちゃんも母ちゃんもいい思い出しかねえんだなァ。飯食い終わったら一緒に稽古してみっか?」
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