第2章 柱
「聞きたいことがあれば聞けよ。途中で勝手に結論付けて勝手に諦めんなァ。心ん中で一人で悲しんでんじゃねェ」
「えっと……鬼が気持ち悪いですか?それとも鬼のお嫁さんになることを甘んじて受けた私が気持ち悪いですか?」
言われたら即実行するので素直な性格なのだろうが、素直すぎてド直球だ。
「はぁぁあ……お前なぁ、気持ち悪ぃって思ってる女を自分の屋敷に入れると思うかァ?」
実弥は立ち上がって風音の頭にポンと手を置き、まだ完全に回復していないであろう体が揺れない程度にわしわしと撫でた。
「お前があの村でどんな扱い受けてたか俺は知らねェ。けどなァ、同じような扱いをするつもりはねぇんだわ。おら、朝飯は作っといてやるから風呂入ってこい」
「私は……この瞳の色で村では鬼子って呼ばれてたの。私に触れられるのすら嫌だったみたいだから、村の人に体を触られた時はビックリしたし、不死川さんが隊服を貸してくださった時も……驚きました」
風呂へと促してくれた実弥へぺこりと頭を下げると、風音は返事を聞く勇気がないのか足早に部屋から出て行った。
「あの目の色だけで鬼子ォ?んなら柱のほとんどが鬼子じゃねぇか。面白ェ、あいつ連れて柱全員に会わせてやりてぇな……目の色だけで鬼子って呼ばれてたなんて言やぁ、それこそ柱が鬼の形相になりそうだ」
自分を含め仲間たちのことを思い浮かべて喉を鳴らしながら笑う実弥を見ていれば、風音の気持ちも晴れていたのかもしれない。
「仕方ないのかもしんねぇが、あいつの世界は狭いんだよ。臙脂に紫に青の目……てか俺も一般人とちげぇ……はぁ、朝飯作っかァ。確か冷蔵器ん中におはぎあったな。食わせてやるか」
一日で恐怖と絶望を味わった少女へ、少しでもその心の傷が癒えるようにと実弥は献立と食後の甘味を頭の中で考えながら台所へと向かった。
その顔付きは面倒くさそうにも映るが、何となく世話をやける対象が出来たことを喜んでいるようにも見える。