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涼風の残響【鬼滅の刃】

第7章 初任務と霞柱


まぁでもさすがに襖だけを敷いて山を下っていると、様々な衝撃で目が覚めるというもの。
ぎゃあぎゃあとやはり騒ぎ出したので、今度は顔を近付けて黙っていただくことにした。

「ね、私のこと覚えてる?貴方に鬼の贄にされかけた柊木風音。今は鬼殺隊っていうところに入って鬼を倒すお仕事をしてるの。貴方を襲った鬼や貴方が差し出したお母さんを喰い殺した鬼を倒すお仕事。はぁ、これ以上騒いだらこのまま放って行っちゃうからね」

この男の息子に向けたのと同じ笑みを向けると、男は顔を真っ青にして黙りこくった。
襖に括り付けられていなくとも、明らかに人より強い化け物である鬼を倒すほどにまで強くなった少女に適うわけもないし、騒げば野犬などの獣が蔓延る山の中に放置されてしまうと理解したからだ。

「貴方が鬼に攫われたって知った時、本当のことを言うと躊躇った。お母さんを贄にした人なんて……って。でも実弥さんと約束したから。任務をちゃんと終えて帰るって。ねぇ、鬼に噛まれて痛かったでしょ?……お母さんはもっともっと痛くて辛かったんだ!貴方よりもっと地獄の苦しみを味わったんだ!」

目の前の男にぶちまけたところで気持ちは晴れないし母親は生き返らない。
それを分かっているからこそ胸が痛み、涙がとめどなく流れ落ちてくる。

今はその痛みを包み込み涙を拭い温めてくれる人は側にいない。
そう思うとさっさとこの山と村から出て帰りたいと強く思った。

「村まで頑張って運ぶから……少しの痛みは我慢して。私だって一応女の子だから、引っ張るだけでも大変なの。歩けないならせめて静かにしてて」

胸の中はぐちゃぐちゃだが一歩進むごとに実弥に近付くと思うと、不思議と胸の中が少しずつ癒されていく。
いつまでも流れてこようとする涙を止めるために深呼吸を一つつき、暗い山の中を一歩一歩進んでいく。

「実弥さん、あと少しで任務が終わります。この人を村まで送り届けたら終わりです。あと少し……頑張ります」

風音の言葉は男の耳を刺激した後、静かな山の中に霧散してやがて消えていった。
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