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涼風の残響【鬼滅の刃】

第7章 初任務と霞柱


「場所ハ麓ニ小サナ村ノアル山ノ中ノ廃墟デス。聞イタ話ダト前ニ鬼ガ住ツイテイタトカ。確カ一年ホド前、不死川様ガソコノ鬼ヲ倒シ、黒髪デ緑色ノ瞳ノ少女ヲ保護サレタト他ノ鎹鴉カラ聞キマシタ」

風音と実弥と小芭内が同時に顔を楓からそれぞれへと向けた。
その黒髪で緑色の瞳の少女は紛うことなき風音だからだ。

「あーー……どうやら私が住んでいた村……のようですね。確かにあの屋敷は鬼が住処にするにはもってこいの立地ですし。そっかぁ……少し複雑な気持ちだけど、放っておくわけにはいかないもんね……楓ちゃん、お夕飯作るから一緒に台所に行こっか。少し外しますね」

「あぁ、頼むわ」

頷きニコリと微笑んだはずなのに風音の表情が二人にはとても悲しく映った。

「行ってやらなくていいのか?住んでいた村では柊木は酷い扱いを受けていたのだろ?確か母親もそこの村人に……」

「今は楓と一緒のがいいんだろ。俺からすりゃあ、あの村の人間が鬼に襲われたところで因果応報としか思えねェ。村八分に加え母ちゃんは鬼の贄にされ、自分も同じ運命を辿らせかけられたんだからなァ。複雑な気持ちどころの騒ぎじゃねェはずだ」

かと言って任務を放棄するなど出来るはずもなく、代わりに実弥や小芭内が行ってやることも出来ない。
二人とも任務なり警備なりがあるので、最終選別を突破し癸という一番下の階級の剣士の任務に同行する時間はないのだから。

「俺が代わりに行ってやりたい、心底な。鬼を早々に倒して一晩中瞳の色が左右で違う俺が村内を練り歩く。その姿を見た奴らはさぞかし夢見がいいだろうからな。むしろ柱全員で赴いて練り歩き目が合った奴全員余すことなく睨みつけてやろうか」

怒っている。
風音に対して特別な感情を持っていなくとも、親友である実弥を心底好いている過酷な運命を強いられた少女が受けた仕打ちに心を痛めているからこそ、怒りも留まることなく上がっているのだろう。

「トラウマもんだろ、それ。まぁ、明日は無理でもいつかしてやりてェなァ。鬼滅ぼしてからすれば鬼子って言葉吐かれても、冗談で済ませてやれそうだしなァ」

風音の心を想い黒い会話が繰り広げられているなど、もちろん本人は知る由もない。
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