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涼風の残響【鬼滅の刃】

第2章 柱


そんな会話が風呂場で繰り広げられていたなど露ほどにも思っていない風音は、次々と薬草をすり潰しては様々なものと練り合わせて小さな容器に詰め込んでいく。

あまりに熱中しすぎて目の前に実弥がいる事にも気づかないまま。

「おい。没頭すんのは構わねぇが少し休め。何をそんな必死に作ってんだァ?」

「えっ!?不死川さん……それは、その」

手元に固定していた顔を上にあげて実弥を見上げると、今度は実弥が驚き目を見開いた。

「お前……化粧取ったのか?……何歳だァ?」

「?16歳です。16にならないと……」

神様のお嫁に差し出せないから。
16になったその日に神様という名の鬼に差し出された。

危うく口から出そうになった言葉を飲み込み、視線を手元へと戻す。
言っても困らせるだけであるし、こうして助け出してもらった今は風音にとってどうでもいい事だ。

「続き……」

「え?」

「16にならないとの続きだァ!変なとこで止めんな、気になるだろうがァ」

やってしまった。
どうしてこうも上手くいかないのかと心の中で嘆きながら、本当の事を話すか嘘をつくかで気持ちが揺らぐも、命の恩人に対して嘘をつくような不義理は働けなかった。

「……16にならないと神様に献上出来ないから。未成熟な体を神様は望まないんですって。だから16歳になってすぐ差し出されました」

実弥には全く意味が分からなかった。
父親に関しては詳しく聞いていないので何とも言えないが、瞳の色が違うだけでここまで排他的になる理由。

それに風音の母親や風音は薬を調合出来る。
村人として歓迎しないにしても、上手く使えば自分たちの益としかなり得ない親子を排除したくなる理由が。

「んだよそれ。気持ち悪ィ」

実弥の言葉に栄養が明らかに足りていない風音の細い体がピクリと反応した。

(どっちだろ?鬼が気持ち悪いのか、それを甘んじて受けた私が気持ち悪いのか……)

真意を確かめたくてもどう聞いたらいいのか分からず……諦めた。

「あ、すみません。朝ご飯、すぐに作ります!」

不自然な話の切り替えと笑顔の中にチラつく悲しみに気付いた実弥は、部屋から出て行こうとした風音の手首を掴んで自分の方に体を寄せた。
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