第6章 贈り物と日輪刀
しかもいつの間にか風音が逃げられないように腰と後頭部を押さえられているので、実弥の思惑通り風音は身動き一つ取れず体を硬直させている。
かと言って逃げようとしたり拒もうする気配は一切なく、驚き固まっていた体は徐々に解れていき実弥に身を委ね出してしまう始末だ。
(全然嫌がらねェ……コイツが俺を拒否することあんのかァ?)
こんな時に何を考えているのだと自分で思いつつも、ふわふわと不安定に体を揺らし出した風音から唇を離し体をしっかり抱き締め治してから小さな声で願った。
「口、少し開けてくれ」
「……口を?こう……んんっ?!ふ……」
風音が口を少し開けた瞬間に再び唇を重ね、中へと舌を差し入れて絡ませると驚き体を跳ねさせたが、やはり逃げ出そうとしたり拒もうとする素振りはない。
それはしばらく続けていても変わらず、顔を真っ赤にしながらも離れまいと実弥の隊服を握りしめていた。
(……どう育てばこうも穏やかになんだァ?クソ……誰にも渡したくねェ……)
渡す渡さないなど実弥が心配するまでもなく、風音は実弥の側にいることが幸せなので誰かに手を取られても取り返すことなど有り得ないのだが……
その事に気付けていないが故の行動と思考なので、風音はもっと大好きだと今以上に伝えなくてはいけない。
……喜んで伝えそうだ。
それはともかくとして、そろそろ風音の心も体も限界が近そうなので、実弥はゆっくりと唇を離して羞恥からフラフラ体を揺らす風音の髪を撫でた。
「悪ィ。大丈夫かァ?」
「ん……大丈夫も何も……嬉しいし幸せ。口付けしてもらったり、こうして頭を撫でてもらえるとフワフワした温かい気持ちになるの。確かに恥ずかしかったけど……もう少ししていたかったな」
いつも通り愛情表現たっぷりの言葉を惜しげもなく向けられたのも重なり、実弥の怒りは何処か遥か遠くへと吹き飛んでいってしまった。
「もう少ししてたら倒れてただろうが……はァ、風音のお陰で落ち着いたわ。伊黒待たせんのも悪ィし戻るか。歩けそうかァ?」