第6章 贈り物と日輪刀
居間で待っていると言っていたはずの実弥の姿を見た風音は首を傾げ、屋敷内へと誘われていた隠はガクガクと震え出した。
「でも二種類用意して下さったみたいですよ?こっちの風呂敷に入ってるのが予備で、こっちのが普段着る用の物みたいで……って、あ!」
普段着る用だと風音が掲げた風呂敷を取り上げると、実弥は中を改めるために結び目を解く。
そして中に入っていた一見すると普通に見える隊服をバサリと広げ、頬にまで血管を侵食させた。
「テメェ……この隊服普通じゃねェよなァ?!」
鬼に対して見せるような表情になってしまった原因を見ようと、未だにガクガク震えている隠から離れて実弥のそばに歩み寄り、正面から運んで来てくれた隊服を見て風音は赤面。
「これは……戦っているとお胸が見えそうなくらい大胆な開き具合ですね。えーっと、ズボンは普通……あら?横に切れ目が……これだと中身が全て見えそう。あ!私の肌を出すことによって鬼にとって嫌な匂いを出せるように……」
「違ェだろォ!これじゃあほぼ裸じゃねェか!」
そもそも鬼殺隊の隊服は雑魚鬼程度の爪や牙なら傷一つつかない特殊な布を使って作られている。
これだけ肌が出ていては守るも何も……と言うより見る方向によってはほぼ裸に近い隊服は最早服として成り立っていない。
風音が自分の匂いを武器に戦いたいのであれば、普段実弥がしているように腕をまくればいいだけだ。
「おいコラァ!逃げられると思ってんのかァ?!テメェ、確か胡蝶にも際どい隊服渡して燃やされてたよなァ!コイツが俺の継子って知ってて屑な隊服持ってきたなら、その根性だけは認めてやらァ!そこになおれや、前田ァ!」
前田と呼ばれた隊服や羽織の製作を担っている隠は実弥のあまりの剣幕に逆らうことも逃げることも叶わず、門と玄関のちょうど真ん中で正座をして縮こまってしまった。
実弥が放り投げた際どい隊服を拾い風呂敷に詰め込んでいる間も、どうしたものかと悩んでいる間も激しい叱責は続いており風音の方が涙を流してしまいそうである。
「実弥さん、もうそこらへんで……前田さんも何か考えがあってこの隊服を持ってこられたのかもしれませんし……あ!こっちの風呂敷開けてみませんか?予備の方はきっと大丈夫なはずです!」