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涼風の残響【鬼滅の刃】

第6章 贈り物と日輪刀


「風音、こっち向いてくれねェか?」

いつもなら抗うことを知らない風音の顔に手を添えて自分の方を見るよう促していた。
その抗わない様が可愛らしく、いつの間にか側にいる風音にたまにしていたのに、今ばかりは自分から顔を上げて翡翠色の瞳で見つめて欲しくなった。

最終選別を終えて日輪刀を手に入れ、今は寸法を合わせてもらっている隊服さえ届けば風音は鬼殺隊の剣士として任務に赴くことになる。

暴発して命を危うくしてしまう能力を抱えたまま。

剣士はただでさえ常に危険と隣り合わせで生きている。
しかし自分の胸の中で微笑みながら見つめてくる少女は、その剣士たちよりも遥かに死が近くにある。

そんな風音を死なせないために何が一番効果的か考えた結果。

「鬼は俺たちの代で必ず滅ぼす。正直何年かかるか分かったもんじゃねェけど、鬼を滅ぼしたら俺のカミさんになってくれ。継子になったこと、カミさんになったことを絶対後悔させねェって誓う」

この屋敷に置いてもらうまで両親以外からは疎まれ続け生きてきた少女から笑みが消え去った。
何を言われたのか……頭の中で必死に考え、導き出した答えを口にする。

「それは……私を実弥さんの家族にしてくれるってこと……?」

「あぁ、俺と家族になってくれ」

「私には……これ以上ないくらいに嬉しい言葉だけど……本当に私でいいの?目の色は緑だし髪の色は金色で……変な力も持ってるのに。こんなにも周りの人と違うのに……私でいいの?」

過去に村人たちにされた言われた言葉や行動が風音の頭の中を埋め尽くし、当時は悲しくも辛くもなかったのに実弥に大切に扱ってもらっている今になって胸に痛みをもたらした。

周りと違う自分が側にいれば実弥に同じ思いをさせてしまうのでは無いかと不安になった。

「私が実弥さんの一番近くにいることで実弥さんが傷付くのだけは耐えられない。私が幸せでも実弥さんが悲しむなら……」

悲しく揺れる瞳が涙で滲み始めたところで、唇に温かなものが優しく触れた。

それが実弥の唇だと気づいた時には外され、頭が再び胸元へと誘われていた。
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