第6章 贈り物と日輪刀
「本当に?!よかったぁ!あ、お茶入れて来ます!実弥さん、鋼鐵塚さん、少し待っていて下さいね」
日輪刀を鞘に戻し箱に入れて元気に台所へ走っていく風音の背中を見送った実弥は箱に戻された日輪刀を瞳に映す。
「この鍔、何の形だァ?葉っぱか?」
「あぁ。要望は特になさそうだったので名前と特徴を元に勝手に造らせてもらった。柊木と言う名前なのだろ?だからそれにちなんで柊の葉を模した鍔にした。あと君に懐いていると聞いていたからな、鞘と柄は似せておいたぞ」
何処からそんな情報が漏れ出たのかなど、考えなくとも思い当たる人物は柱の誰かしかいない。
余計なことを……と思いつつも造ってくれた鋼鐵塚の前でそれを言うわけにもいかず、またそれを聞けば顔色をパッと明るくして喜びそうな風音を思い浮かべると言う気すら消えていった。
似せていると言われた鞘と柄は確かに実弥の日輪刀と酷似している。
違うのは色のみ。
実弥のが深い緑、風音のが薄く明るい緑だ。
日輪刀の刃が若葉色に染まったのでちょうどいいといえばちょうどいい。
「……そうかィ。って、どこ行くんだァ?!アイツが茶用意してんだ、もう少しゆっくり……」
「気遣い無用。俺は日輪刀が染まるのを見れたからそれで満足だ。帰らせてもらう……あとあの娘に言っておけ、折ったらタダじゃおかないと」
なんとも不吉な言葉と引き留めようと手を伸ばした実弥を残して、鋼鐵塚は来た時とは打って変わってとてつもない速さで去っていってしまった。
「はァ……相変わらず刀にしか興味ねェ人だなァ。しゃあねェ……」
数秒前に門が開閉する音が聞こえたので鋼鐵塚を引き留めることは諦め、機嫌よく茶の用意に勤しむ風音のいる台所へと足を向ける。
「派生なァ……何の呼吸になんだ?ふわふわした風出てたから……微風の呼吸?締まりねェ……」
締まりがないし軟弱にしか聞こえない名前を頭から追い出してから台所を覗くと、やはり機嫌良さそうに何の歌か分からないが鼻歌を歌いながら風音が火をかけた薬缶の前で立っていた。
「茶の用意してくれてるところ悪ぃけど鋼鐵塚さん帰っちまったぞ」