第6章 贈り物と日輪刀
「構わねェよ。そろそろ鋼鐵塚さんが怒り出すだろうから、むしろ早く開けて感想言う前に握っちまえ」
無事に許可をもらえた風音は慌てて木箱を畳の上に置いて実弥の助言通りにそそくさと蓋を開き、日輪刀をまともに見ることなく柄を握って持ち上げ鞘から慎重に抜き取った。
(染まらなかったらどうしよう……)
不安に駆られ動きを止めたのは一瞬。
鋼鐵塚が怒り出すかもしれないと危惧して、心の中で刃が染まりますようにと祈りながら刃先を上にしてギュッと柄を握る。
二人に見守られること数秒、無事に日輪刀の刃は鎺(はばき)から色が滲み、徐々に刃先まで色を変えていった。
「染まった……綺麗。実弥さん、鋼鐵塚さん!染まりました!深緑と言うより若葉色ですね。実弥さんと色が違うけど……一応緑だから風の呼吸でいいの?」
若葉色に染まった日輪刀から二人へ視線を移すと、ポカンとする実弥とポカンとした雰囲気を出している鋼鐵塚に見つめられていた。
「えっと……この色は良くないですか?剣士になれない?」
想像していた反応と違う二人に戸惑い眉をハの字にすると、実弥は肩より長くなった艶やかな金色の髪に指を滑らせ笑顔を覗かせる。
「いや、良くないこともねェし剣士にもなれる。ただ見たことねェ色なんだよ。風の属性には違ェねェけど、お前の場合は派生の……」
「若葉色?!まぁ綺麗に染まる様を見れたから俺は満足だ!ほぅ……若葉色かぁ、目に焼き付けてさせてもらう」
柱である実弥が話していようとお構い無し。
かと言って特に実弥が怒る気配もない。
その様子にホッと息をつき、風音は自分の日輪刀に視線を戻した。
「派生……つまり厳密には風の呼吸ではないと言うことですよね」
シュンと瞼を僅かに落とした風音が考えていることを察し、髪に滑らせていた手を頭にポンと置く。
「別に派生でも問題ねェっつってるだろうがァ。放り出すこともしねェし、お前がまだ望んでんなら継子にしてやることも出来る。全く落ち込むことねェわ」